戦の花

 優雅に漂う孤独の魚。捌いて焼いて皿に飾り、人類の欲を一時的に満たすのみ。幽鬼の如く乱れる蝶。捕らえて刺して晒しもの、人類の欲を定期的に満たすのみ。人類の融けた生命体。歯車に調えて規則の枷を、人間の総てを永久的に糺すのみ。チク・タク――神の力も人類の機械。仕掛けた運命も支配の種だ。残酷な事柄に。私は傍観者読者で在る。彼等の雄叫びが耳を震わせ、哀れな姿に目眩く思い。ああ。恐ろしい。私は私が怖ろしい。勇敢な彼等の純粋な怒り。感情を弄び始めた私が最も忌まわしい。彼等には恐怖など一塵も無いのだ。在るのは沸騰する正義と憤慨。悪魔も天使も畏れる、人間どもの残虐性クトゥルーよ。そうだ。彼等は精神を侵蝕されたのだ。遊戯に飽きた私が伝える、残虐性クトゥルーの虜。皆よ。傍観者読者たる皆々よ。如何か。私の愚睡想像を赦し給え。彼等には殺戮が必要なのだ。理由は単純――幸福な結末など過去の繰り返し。彼等は既に飽食の人間だったのだ――私は抱擁する。私は執筆する。私は傍観を辞めた。新たなる職を得たのだ。神よ。天使よ。悪魔よ。驚愕の声を魅せるが好い。戦に咲いた精神の光。平穏を裂いた精神の闇黒ル=リエーに盃を……私は這入った。私は墜ちて往く。奈落支配者の歓喜に堕ちて往く――此処は如何なる空間か。皆々よ。私の存在を忘れ給え――さあ。今度は。私が主人公を執ろう。

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