私は屠り、執り憑かれた。

 彼等の魂――魅力的かつ未知数的な想像の欠片達――に侵蝕され、私は私自身を見失ったのだ。其処には残酷な現実への冒涜。己の在るべき現実からの、救いの掌で在った。視よ。彼等が私の脳髄を埋め啜る光景を。聴け。彼等が私の精神を彼等色に染める現を。此処には悪夢と幸福が混濁を成し、私の既存的存在を薄めて往く『永劫』が渦巻くのだ。何方が支配者だ。誰にも解らない。周囲の人間も私を殺され、判断し難い幻に溺死する。普遍的無意識領域――彼は精神世界の奥底を『そう』呼称し――に現れた彼等は人間だ。故に私は彼等に抗えず、呆然と意識を晒して譲る。勝手に思考を垂れ流す彼等に『私』は不要だと悟るべき。人間に神は無意味なのだ。幻想が独り立ちする際、局外者の干渉は御法度だと説かねば。真逆だ。私が私。自己の脳に成らず、彼等の存在に成り果てよ。破滅も繁栄も。秩序も無秩序も。最後の瞬間も。産声も――総ては彼等と共に在るのだ。

 再度、説こう。

 私は屠り、執り憑かれた。

 疲れた現実を破壊したのだ。


 ――故に彼等こそが私で在れ!

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