求めるもの

 我々人類が最も渇望する宝物。脳髄の超越的エネルギーと成る宝物。何某が説いた平々凡々たる生活に在らず、子供の如き遊戯性に含まれる、宝物の在処は不明だ。物語――空想を好む人間が嗜んだ、在ら遊る酔い――は些細な養分だと思考せよ。故に『満たす』宝箱は無に等しく、不明だと解くのに相応しい。結局は真に人間が『悦ぶ』輝きなど視得ず、世界は全き闇黒に抱擁されるのだ。ああ。残酷。神を創造想像する人間でも『人間』を謳歌する術は判らないのだ。ならば人間は諦めの選択肢のみか。否で在れ! 人間には抗う力が存在する。老紳士ラヴクラフト他『感情』の逸脱で求めた名は数多く、盲目に進むべき覚悟が要るのだ。我々が彼等の道を貪る為には『特定の感情の窮極』を探さねば――身を投げねば――成らぬ。為る事も不可能だろう。先程の老紳士ラヴクラフトの場合は恐怖だった。確かに彼は到達点に近寄った。遅かった……遅延性の眩暈を齎す未知群は残酷にも殺されたのだ。何が凶器だったのか。答えは単純。狂気で在った。恐怖とは娯楽に鏖殺される。視よ。吸血鬼も木乃伊も果ては旧支配者も! 我々の骰子に委ねられた――兎角。話が逸れた。重要なのは『邪魔されずに至る』精神的かつ肉体的な強度だ。物語に覗かれず。人間に晒されず。最も渇望する宝物を『独り占め』すべき。さあ。酔っ払った爺の如く、若い己はさまよい始め――此処に佇む。此処を降る。此処を転がる。此処を捻じれる。此処を揺さぶる。此処を舐る。此処を求める。此処を……オイ。オイ。騒々しいな。黙れないのか――金がい。

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