2014/11/13 18:10:11

「本当に大丈夫でしょうか」


 相手は人一人を殺したのだ。細身の先輩が立ち向かうなんて、柚希さんの二の舞にならないだろうか。


「安心しろ」先輩はネクタイを上げた。「問題ない」

「はい」そう言われたら素直に引き下がるしかない。「分かりました」


 作戦はシンプルだ。先輩が一対一で体育館裏のスペースに小栗を呼びだす。物が多いから隠れやすく、人目につかない場所だからだ。俺が隠れ、先輩に何かがあったらSPさんに連絡をする。そのためのスイッチを握りしめた。手汗で滑り落ちそうになる。

 小林先輩はさっさと小栗を呼びだしに行った。俺も定位置に隠れる。こうなってしまえばあとは見守るしかない。



 数分後。小栗とともに先輩が戻ってきた。息を止め、先輩を見る。この位置からだと二人とも見える。何もありませんように。


「それで何の用かな」

「妹の柚希を殺したのはお前なんだろ。監視カメラにも映像が映ってた」


 ここで何か行動に出るかもしれない。誰も彼もがあの用務員のように無抵抗なわけがないのだ。ドラマのワンシーンのように先輩を刺すかもしれない。あらゆる可能性を確かめ、ぎゅと握る。


「そうだね」

「動機は」先輩の声は擦れていた。「なんであの馬鹿を殺したんだ」

「柚希が俺に一目惚れをしたんだ。俺も彼女のことが好きだったから、相思相愛だな。恋人だから、あらゆることを協力をしようと思っていた。そしたら、あの犬の鳴き声の事件だ。俺は柚希に協力した。ありとあらゆる手を使って彼女が安全に捜索できるようにした。警備の巡回も、表門と玄関が開いてることも全部、クビ覚悟で教えてやった」


 小栗は手を広げた。


「そこで彼女を捕まえて好きだと言ったら、拒絶した。変だ、おかしい、何かが間違っている。相思相愛じゃなきゃおかしいんだよ、俺と柚希は!」


 狂ってる。そう思った。妄想も甚だしい。


「だから殺したのか。愚かなやつだ」そう吐き捨てた。「そんな一時の感情で人生を棒に振るとは」

「黙れよ」小栗が先輩を睨みつける。「君、さては人を好きになったことがないな?」

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