2014/11/13 17:50:33

「して、ご用件はなんでしょう、お父様」


 ポーカーフェイスを崩さず、先輩は言った。普段からは想像もつかない礼儀正しい口調に、少なからず圧倒されるものがあった。


「柚希を殺した犯人が分かった」

「それはどこの情報筋で?」

「もちろん警察にだ。特別に教えてもらった」


 その『特別』がどんなものなのかは想像に容易い。言葉に詰まっていると、先輩は身を乗り出した。


「犯人の名前は」

「小栗 歩夢あゆむ

「小栗先生が?」


 目を見張った。先輩がすかさず突っ込んでくる。


「知り合いか」

 驚きを隠せず、小声で先輩に囁く。「担任です」


 俺の言葉に先輩は頷くと、自分の父親を見据えた。

 

「お父様、お願いがあります。今から彼と小栗に会いに行ってきます。作戦はありませんが、私は彼の真意が聞きたいのです」


 ぎょっとする。真犯人に直接会うだなんて、あまりにも危険だ。大声で反対したかったが、先輩は本気だ。俺や実の父親が反対しても、この人は聞かないだろう。それに事件に片足を突っ込んだ俺も、真相が知りたかった。


「あの」頭を下げる。仮面は脱ぎ捨てた。「俺からもお願いです」


 先輩も習って頭を下げた。長い髪が俺の手に触れる。


「分かった。ただし、作戦は練ってからいけ」


 俺と先輩は顔を見合わせ「ありがとうございます!」と心から礼を言った。

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