2014/11/10 12:27:38

 なんで今更になってこんな夢をみたんだろう。昼頃、俺は焦っていた。このことを示唆して? まさか、そんなことあるはずがない。

 小林先輩がいないのだ。普段からの集合場所の屋上スペース、3年の教室、どこに行ってもいなかった。すれ違いになっているのかもしれない。そう思って、昼ごはんは集合場所食べたのだが小林先輩が来ることは無かった。日課であったことが無くなると、どうにもむず痒い。

 考えてみれば、SNSも電話番号もクラスも性別も何一つ知らない。けれど、それは先輩も同じだ。俺が芸能活動をしていることぐらいしか知らない。互いに何も知らないからこそ気兼ねなく喋れると思っていたのだが、それが仇となった。

 不便だ。役に立たないスマートフォンを弄びながら、途方に暮れる。

 昨日のサイトが思い浮かぶ。Kについて調べてみよう。それどころではないのだが、先輩に会うことができないのだから仕方がない。暇だし、と検索ボタンを押す。

 呼吸が止まった。目の前の文面が信じられない。目を擦り、もう一度、検索結果を見る。確かめないわけにはいかない。暗雲のように立ち込める嫌な予感を押さえ、俺はサイトを開いた。警視庁のホームページ。恐る恐る目を通す。


『K学院所属2学年の小林 柚希ゆずきさんがK学院の制服を着たまま出かけ、家に戻ってこないというもの。平成23年9月5日受理』


 あげられている特徴も顔写真も全てが一致する。鳥肌が立った。つまり、俺は今まで死人と対話をしていたということになるのか? 冷や汗が止まらない。目の前の文章が、事実が、現実だと受け入れられることができない。暖房が切れたのか、俺の感覚が狂ったのか、酷く寒かった。

 酷い顔色をしていたのか、チャイムが鳴って戻ってきたクラスメイトらに声をかけられた。彼らの内、本当に心配しているのはどのぐらいなんだろう。八つ当たり気味に感覚でそんなことを考えた。なんにせよ、この後の授業なんて耳に入ってこないだろう。

 平成23年9月5日、Kが失踪したのは同じ年の9月1日。変ではないし、むしろ小林 柚希さんがKと見てもおかしくはない。

 先輩が俺をオカルトに付き合え、とスカウトした理由が「幽霊が見えるから」だった。その時は一体、なんの冗談だと受け流していたが、いよいよ現実を帯びてきた。俺が無自覚なのは、あまりにもはっきり見え過ぎていたせいで気づかなかった。確かに心当たりはある。いや、そんな馬鹿な。

 でも確かに、先輩が他人といるところは見たことない。それに加えて、あの時。クラスメイトが階段を上がってくる足音がした途端、先輩は「帰る」と言ってさっさと階段を下りて行った。最後まで見届けたのだから、それは確実だ。先輩の言葉が本当ならば、まっすぐに階段を下っていったはずだ。それでは、なおさら先輩とクラスメイトはすれ違っていなければおかしい。だのに、クラスメイトは「喋っていたの?」と問うた。

 いや、だったら俺を屋上から引きずりおろしたのは一体なんなんだろう。普通に昼食も食べていた。

 ぐるぐると頭の中で回る。色々引っ掛かることはあるが、意外にすんなりと小林先輩が幽霊であることを受け入れられた。普段から胡散臭い話に先輩と首を突っ込んでいるせいかもしれない。伝えたいことだけを言って消えるのは先輩らしいが、もっと情報が欲しかった。

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