貴様らが何処に隠れようが、上を見上げれば光が照らしている、それが私だ②
「整列しろクソ共! 遅い2秒で並べ! ただでさえ少ない兵を更に分けるんだ、次の指示を予想して突っ立っていろ!」
「はい!」
「何をしているクソドラゴン! 貴様はひとつの隊の長だ、しっかり並んでしっかり死んで来い!」
「分かったから朝から大声を出さんでくれ、私は朝に弱いのを知ってるだろ。昨日は死ぬなよとか……」
瞼を閉じて俯きながら反論している途中、頭を蹴り飛ばされて強制的に口を閉ざされ、他の騎士がそれを見て最大限に姿勢を正す。
まだ治りきっていない傷に衝撃が響くが、傷口を抉られないだけマシに思えてくる。
手際の良い指示で次々に隊が分けられ、騎士にしては珍しい、男女3人組で仲良しの騎士が私の下にやってくる。
その他には誰も騎士が来ず、戦うにしろ
カミラ率いる本隊にはアリスと参謀の少年が配属されていて、メルトとナーガがどの隊にも配属されていなかった。
「訓練官様、何故私たち龍人種は全員待機なのでしょうか」
疑問を第一にぶつけたメルトに対して、カミラは面倒臭そうに一瞥し、一旦指示を出すのをやめ、龍人たちの方に向く。
「貴様らは種族が違う、人類種との関係がこれ以上
「だがよ、帝国は俺たちの仲間をやったんだ! 今更拗れるも何も無い、それにトールの隊には3人の龍人が居るじゃないか!」
「こいつらは特別に鎧を着ている、翼が窮屈だからと断ったお前らと違ってな。龍人の方が
メルトの背後に立っていた全員も含めて黙らせたカミラは、門の前に待機させていた馬に跨り、準備が完了していた全軍の先頭に立つ。
「開門しろ!」
ずくに上昇を始めた門が開いて平原が姿を現し、腰から剣を抜いて掲げ、後ろに歌の頭を返す。
「覚悟を決めろ、何も後悔せずに駆け抜けろ。出撃!」
僅か1000にも満たない騎士が発する雄叫びとは思えない声が響き、城の方に目をやると、待機する龍人が叫んでいた。
街の真ん中を貫く大通りから風が吹き抜け、開いた門を潜って全騎士の背中を押し、一瞬だけふわりとした感覚に背中を押される。
「相も変わらず
「あんたがウチらの隊長か、ほら挨拶しなよ兄貴に」
兄貴と呼ばれた目付きの悪い少年の方を見ると、私に一瞬だけ目を向けて、また前を向き直ってしまう。
馬を少年2人の間に入れて並走を始めると、先程話し掛けてきた少女が右側に戻る。
「初めましてだな少年、君が兄貴って子か」
「そうだ、女みたいな
「こりゃカミラわざとやりやがったな、なんの嫌がらせだ。しかも初陣だろお前たち、呆気なくやられるなよ」
「全軍戦闘準備! 敵は目と鼻の先だ、生憎多い奴らは方向転換も遅い、横腹を突いてやれ!」
狭い公国領ではすぐに敵と会うことになり、立ち回り方を教える余裕も無く、カミラによって戦闘準備が告げられる。
剣を2振り抜いた目付きの悪い少年が勝手に先行し、その後ろを他の2人が追って前に出る。
「おい待てお前たち、無駄な交戦は避けろ」
「腰が引けてるんなら下がってな、その綺麗な顔に傷つけちゃ悪いしな」
赤毛の少女が私に振り返って笑顔でそう言い、馬の速度を更に上げた少年に追い付く。
「この、やられた」
「先行するかトール、あいつらを死守しろ! 絶対にだ、分かったな!」
「分かってる、もう1人も失うかよ!」
先頭のカミラを追い越した3人を追って馬を駆り、翼に頼らず、龍力だけを使って馬から飛び上がる。
そこからはただ前に加速するだけで、3人を追い越して戦闘準備が整っていない帝国兵に突っ込む。
「私が公国の将だ! 討ち取って功績を上げてみろ!」
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