従魔たち
ちょっとした騒動にはなったものの、奇妙な侵入者は、俺の従魔であるということが判明した。
ペシュの端的な説明では、従魔であること、名をチョビであること、という事実のみの確認くらいしかできなかったが。
「……従魔。こいつも人型に変化したりするのか?」
俺が問いかけると、ペシュはフルフルと首を振った。
「でも……大きくなったり、小さくなったりは、する」
「なるほど、それなら小さくなってここまで辿り着いたのかな? でなきゃ、衛兵に見付かるもんな」
手のひらに乗せたチョビは軽石のように軽かった。
ツンッと背中をつつくと、こちらを見上げて、ちょっと首を傾げてスリスリと頭を擦りつけてくる。
うっ、なんだこれ。可愛いぞ……痛いけど。
「なんというか……途中でメリッサに見つからなくてよかったな」
素早く黒いカサカサ動くものを見つけたら、たぶんメリッサならスリッパ的なものでプチッと……まあ、この世界にアレがいるとはかぎらないけれど。
「神子様、お食事のご準備が出来ました。こちらのお部屋で召し上がりますか?」
噂をすればなんとやら、先ほど一度出て行ったメリッサが、ノックとともに再びやってきた。
「ああ、今行く」
庭園で意識を失った俺は、どうやらそのまま一昼夜眠っていたらしく、丸一日絶食状態だった。起きた時は驚きのあまり空腹を忘れていたが、夕食まで待てそうもなかったのでちょっと遅い昼食を用意してもらったのだ。
裸足にスリッパのような下履きをつっかけて立ち上がると、途端にチョビが慌てたように背中に飛びつき、そのまま頭のてっぺんまで登って座り込んだ。
ぜんぜん重くないので構わないのだが、またしてもメリッサに驚いた顔をされてしまい、エレに至っては無意識に後ずさっている。
「あ、行儀悪いか? それなら下ろすけど」
考えてみれば食事中に動物(?)を頭にのせてるのはいかがなものか、そう思ったのだがメリッサたちは慌てて首を振った。
話を聞くと、どうもチョビは希少種の幻獣なのだという。
というか、もし辞典などに載っているとしたら「危険」との注意喚起が、二重にも三重にもされているような魔獣なのだという。
――溶岩の石ころみたいなコイツが?
まあ、伝承とかそういうのは大げさに伝わるもんだしな。
「じゃあ、いただきます」
俺が手を合わせてそう言うと、メリッサが「はい」とほほ笑んだ。
初めてそう言ったときは目を丸くしていたが、今ではこうして返事をしてくれる。日本語そのままなので、たぶん意味は分からないだろうけれど、少なくとも食事の前の挨拶だろうことは伝わっているだろう。
「……またパン粥に逆戻りか」
「今日だけでございますよ。ご辛抱くださいませ」
匙で温かい粥を掬いながら、ふと気になったことを聞いた。
「そういえば、俺を運んでくれたのってメリッサだよな? あの時、俺と一緒にいた親子のこと、なにか知っているか?」
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