アドバイス2

 そのほとんどが、イメージトレーニングのようなものだった。彼に指示されて、俺は目を瞑り、ゆっくり深呼吸しながら身体から力を抜いた。


「胸や腹のあたりに滞っているものは、本来は身体の隅々までいきわたり、君を守るものだ。今は、行き場を失って道に迷っている状態なんだ」


 ――魔力操作。

 言葉で言うと簡単だが、実はかなりコツや才能がいるものらしい。中には、これが習得できないがために、本来ある力を十二分に発揮できないという人が少なくないらしい。でも、以前の俺は実に巧みに熟していたらしいと、彼は言った。

 本当かな、魔力なんて未知なるものを、到底うまく操れるとは思えないんだが。


「先生が優秀だったことも幸運だった。実はね、ロランは幼い頃の私の師匠でもあったんだよ。その後、父の要請で君の元へ送られた」

「……ロラン?」


 どこか懐かしい感じがして、ふと目を開いた。


「ほら、ダメだよ。ちゃんと目を閉じて」


 まるで見ているかのように注意されて、俺は慌てて目を閉じた。

 優しい声で、ささやくように、その声は俺の体の中に巡るものを導いていっているようだった。ともすると睡魔が襲ってきそうになるほどの安心感があった。

 ここへ来て以来、ずっとうとうとしていたけれど、きっとぐっすりは寝ていない。でも、今なら泥のように深い眠りに就けそうな気がした。

 今日初めて聞いたはずの声……でも、どこか体の奥底で知っているとささやく声がある。

 ほとんど半分眠っているような状態まま、いつの間にか終わっていた。何かしたというより、ただ単に声に合わせるように、ゆっくり呼吸をしていただけのような気がする。


「……気分はどうだい?」


 手足、指の先まで、まんべんなく熱が行き渡り巡っている。ずっと胸のあたりに詰まったようなものが、すとんと落ちて、息苦しさもまるでない。

 気持ちがすっきりして、最高の気分だった。

 俺はそう答えたかったけれど、もう瞼が上がりそうになかった。唇を動かすこともできないほどの眠気が、全力で俺の意識を沈めにかかっている。


「大丈夫そうだね」


 すると、相手はまたもや見えているかのように言った。


「いろいろわからないことだらけで不安かもしれないけれど、私を始め味方はたくさんいる。そして、ここもまた必ずしも君にとって、単純に敵地というわけではないんだよ。巻き込まれた君にとっては災難だけど、少しの間、様子を見ることに徹するように。決して短気を起こしてはいけない、わかったね……」


 最後に名を呼ばれたような気がしたけれど、その時にはもう深い眠りに落ちていた。

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