アドバイス
――あの日彼は、俺の体調不良を回復できると言った。
「そう……目が覚めて、しばらくしてから身体の調子が悪くなったんだね?」
「ああそうだ。だんだんひどくなるようで、最近では起き上がるのも正直辛い。こう、胸のあたりがモヤモヤしているというか……うまく言えないけど」
「……無意識下では問題なかったが、目が覚めたことでかえってコントロールを失って迷走したってところか」
小さく呟いたそんな声に、俺は思わず聞き返したけれど「いや、なんでもない」と、あえて説明を加えることなく、彼は仕切りなおした。
「結論から言おう。今の状態は魔力の自家中毒だ」
「……え? なに」
何を言われているのか、すぐには理解できなかった。思考が追いつく前に、相手はさらに続けた。
「例えるなら、血の巡りが悪い状態とでもいうか……確かに、君は幼少の頃は身体が弱かったと聞いているけど、成長とともにかなり改善したんだ。魔力を開花させて、それをうまく応用したらしい」
俺は「はあ……」と気のない返事をした。
そんなことを言われても記憶がないので、そうなんですね、としか答えようがない。内容は突っ込みどころ満載だったが、よくわからないから口を挟むこともできないでいた。
「もちろん、そのように導いてくれた先生がいたんだ。君の魔力の量はかなり多く、しかも能力の上昇が急激だったことから、当時も、今回のような中毒を起こしかねなかったはずだからね」
彼の話では、魔力を操る術を教えてくれた人がいたとのことだ。武術の達人だったらしく、俺の兄弟の剣術指導をしていたようである。
ただし、俺には体術や剣術、わかりやすい魔法などの指導はせず、ひたすら魔術コントロールのみを叩き込んだようだ、とペシュの向こうの人物がちょっとだけ苦笑したのが分かった。その気持ちは俺もわかる。だって、聞くだけですごく地味そうなトレーニングだ。
下積みとか基礎とかって、子供は嫌いだろうからな。
俺って、そんなことされてたんだ。もっと剣術や体術を教えてくれとか、絶対にせっついていただろうことは予想に難くない。
魔力が多いのに魔法が使えなかっただの、身体が小さくて剣術には向いてなかっただのと理由はあったみたいだけど、要は最優先事項がそれだったのだろう。
「……よし、少しだけ教えてあげるよ。本当は直接会って様子を見ながら、といきたいところだけど……体調が戻らないとその機会もないし、ジレンマだね。本来なら、すぐに出来るようになるものでもないけど、なにしろ君は一度体得しているんだから、大丈夫。出来る出来る」
あれよあれよという間に、自分に存在するかどうかわからない魔力のコントロールなどという、難題を突き付けられてしまった。
俺、さっきから「はあ」とか「へぇ」しか言ってない気がする。
だが、この原因不明の体調の悪さが良くなるなら何でもやってやろうと思った。
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