学生ご用達

 オリエンテーションとグループ分けが終わり、講堂からぞろぞろと学生たちが出てきた。

 リュシアンも、エドガーと共に廊下へと進む。


「なんだよ、ニーナたちは放っておいていいのか?」

「エドガーだって、さっさと行っちゃったくせに。僕を置いてかないでよ」


 この合宿におけるグループは、その趣旨から武器別ではなく新入生か否かという組み分けになる。リュシアンとエドガーは同じグループで、他に五人の新入生と、数人の上級生がつく。基本的に、この約十人ほどのグループで期間中は行動するのだ。

 男女の割合は自由だが、テントは二つしか使えないため、現実的に約半々というのが多い。

 監督上級生は、当然のようにニーナとアリスだ。あと一人、上級生の男子が加わるが何分この二人が強烈すぎて誰の記憶にも残っていない。

 本日は顔合わせ程度で、同じ新入生同士でもやっと名前を覚えたくらいである。新入生組は、リュシアンとエドガー以外はクラスが違ったので、ほとんど初対面といっていい。むろん相手は、リュシアン達の事を上級生二人と共によく知っている。良くも悪くも、有名人四人組なのであった。




 学園都市という名は伊達ではなく、この街の経済は、すべて学園で回っているといっても過言ではない。寄宿舎を兼ねた宿屋は、学生の親や学園都市を下見や見学に来た人達の宿泊施設としても大繁盛である。

 飲食店、雑貨屋、武器屋、防具屋などなども、ほとんどが学生ご用達だ。驚いたことに、冒険者ギルドと商業ギルドもある。

 在学中、冒険者ギルドに加入することは、じつはそんなに珍しいことではない。

 基礎となる教養科をⅥクラスまで修了すると、一日中授業が入るわけでもなく学園行事も圧倒的に少なくなるし、自由参加が認められるようになる。

 どの科もⅥクラス以降になると、授業というよりはグループによる研究や、武術関係なら騎士や護衛剣士などの従者として、または騎士候補として、現場での訓練を行ったりするのだ。そのまま研究所などの施設に入所して、残りの単位をそこで働きながら取る学生もいる。

 薬草学にしても、実際の依頼を受けながら腕を磨くほうが効率がよいこともあり、採取専門の冒険者として活動しながら勉強を続けている学生もいた。またそういう学生の護衛としての仕事があるため、冒険者もわざわざ学園都市に拠点を置くことさえあるのだ。

 学園都市にはありとあらゆるものが揃っているし、ある意味優秀な人材を確保できる場所として、あえてここに研究所を置く機関なども少なくない。学園都市が、あらゆる分野の最先端をゆく要因なのかもしれない。

 

 ということで、リュシアン達は授業が終わったあと揃って街に出てきた。もちろん、今週末からのキャンプでの準備のためであった。

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