World Of Dawn③
警告の意味を理解しないまま城内の廊下をジャンヌと歩き、あれからどこかに行ってしまったジュンの指示通り、巡回している騎士に気取られないようにアイラスたちが居る部屋に向かう。
ドアをノックしてから暫く間を置いて開けると、剣の切っ先が首の前で真っ直ぐに伸びる。
突然繰り出された手荒い人物確認を魔力障壁で受け止め、私の姿を認めて目を大きくして固まったアイラスに微笑む。
「久し振りアイラス、ヨルムもどちらも綺麗になったな」
「申し訳ありませんクライネ様、主の気配も感じ分けられずにご無礼を」
「それが出来たらどの騎士も苦労しないさ」と、これ以上謝罪会見を引き伸ばさせず、時間が無い為本題を早めに切り出す。
「私が部屋を出てから暫くして、何処に行くか悟られないように魔道棟に来て欲しい」
「事情は後で聞くね〜、久し振りのハグもそのと……」
「じゃあ、私はこれで」
ヨルムが目に涙を溜めながら私を見ていたが、そう言うところはあの面倒なドラゴンに似ているかもしれない。
頭の中のアホ面美人ドラゴンをストレルカで吹き飛ばし、頼れる3人の側近が居る場所を魔力探知で探る。
やっと見つけたと思って飛ぶ為にジャンヌの腰に手を回したが、3つの影がそれぞれ違う方向から現れる。
前に綺麗に並んだ3人が低頭している前に、上から軍師が落ちてくる。
状況が理解出来ずに硬直する軍師は私を認めると、「よっ」と右手を上げて軽く挨拶をしてくる。
「久し振り」と挨拶を返すと、苦笑して落ちた黒い本を拾い上げて立ち上がる。
「この時を待っておりましたクライネ様、貴女様の神核がこの帝都に現れた瞬間、訓練を切り上げて推参致しました」
「突然ナハトが走り出すものだから、私たちも本当にびっくりしたよ。見失わない様に必死に追ったら君が居たのさ」
「クライネかっこよくなったね! どう、私はお姉さんになったでしょ!」
突然顔を上げてポーズをとるリュリュの背丈は驚く程高くなり、私を含めても1番のプロポーションを誇っている。
自分も背丈はそれなりに高くなった方だが、リュリュと並ぶとどうしても差がついた場所がある。
「折角身長が170まで伸びたのに、リュリュは身長も胸も私よりあるなんて反則だ」
「あー、クライネ喋り方変わってる。何か新鮮。3年会ってなかったからなんでも新鮮だけど、何かより格好良いね!」
相変わらず人の話そっち退けなリュリュを優しい表情で見守るナハトは、どこか寂しそうにしていた。
それに気付いたのか、チェリーはわざとらしくナハトに抱き着く。
「えっ、そんなの……無理です」
何かを耳打ちしたのか、顔を赤くしたナハトをからかうように、チェリーは不敵な笑みを浮かべながらリュリュとジャンヌの手を引いて歩いていく。
後はお2人でと目で言ったチェリーに誤解されているっぽいが、残念ながら私は誰ともそうなる気も無いし、それがどんな感じなのかも分からない。
どうしたものかと無言を貫いていると、落ち着かない様子のナハトから時々視線を感じる。
それに余計困って何も出来ないで居たが、取り敢えず魔道棟に歩く事を提案してみる。
「少し歩こう、3年間の話も聞かせて欲しいしな」
「あっ……はい。すみません、3年前までは普通にお話が出来たのですが。何だか緊張してしまって、格好良くなってたのは予想外で」
「本当に調子が狂うな、3年前までは私の方が小さかったのに、今やナハトが私を見上げる方とはな」
「クライネ様は纏っている雰囲気が鋭くなりましたね、騎士って感じで凄いです。私と言ったら、あの日から何も変わってなくて、成長どころか後退してて……すみません」
随分変わってしまったナハトの空気に付いていけず、廊下に沢山ある中の一つの窓を開け放ち、少し助走をつける。
ナハトの手を引いて窓から飛び出して宙を舞い、翼を出そうと魔力を纏ったナハトを強制的に制する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます