ACT86 アイドルの帰還

「ほな今日も張り切って行こかー」

 今日も晩春さんは元気一杯だ。

 今日はMIKAが全国ツアーを終えて番組に復帰する。

 私と真希以外のレギュラーはどこか気合が入っている。

 私が居たじゃない! 私じゃ役不足って言いたいの? ほんと失礼しちゃうわ。


 でも今は、そんな事よりも真希の方が重要だ。

 なぜかは分からないが、かなりご機嫌斜め――不機嫌だ。

 MC席からひな壇に戻った私と真希はMC席に帰ってきた新なニュースターに視線が向かう。

 先日のCM撮影で、MIKAの本性を知った。

 ライバルを通り越して完全な敵だ。

 しかし真希はそんなMIKAに対してではなく、その隣に立つメインMCの晩春さんに鋭い視線を向けていた。


 何で晩春さんを睨んでいるの?

 真希の真意が全く読めない。


「それでは今日もお茶の間の皆さんに大爆笑を届けてくれる。空前絶後の面白さを誇る我らが基地局の精鋭研究員でーす」

 無茶苦茶ハードルを上げている。

 芸人たちからはMIKAのあおりに対してのガヤが飛ぶ。

 ふと隣を見ると真希が歯噛みしていた。

 ん? やっぱりMIKAを見てる?

 終始真希は、晩春さんを見たかと思えばMIKAを見るといった風に忙しなかった。


 …………

 ……

 …


 番組は進行し、面白動画を紹介するコーナーになった。

 

「今日の担当はでれやったかな?」

「俺ですよ俺!」

「おお、そうか今日はピンキーズの加藤やったか」

「シナモンの半田ですよ!!」

「そうは言うても、結衣ちゃんが前にお前のこと、加藤さん言うてたからてっきり加藤かと思っとったわ」

「ヒドイ!? 何より結衣ちゃんに覚えててもらえんかったのが辛い」

 私は慌ててフォローする。

「だ、大丈夫です。今はもう覚えてます」

「つまりは前は覚えていなかったと……」

 うっ……フォローしたつもりが墓穴を掘った。

 まあ、スタジオは笑いに包まれたから良しとするか。

 MIKAは目の奥が笑っていないけど……。

 真希は……目が血走っている。こことは別の世界を見ているみたいだ。


「そうや! これだけは言っとかなアカン」

 晩春さんの声にみんなの視線が集まる。

「半田の映像仕入れてきたのはワシやから。そこんとこ宜しく」

「別に手柄くらい若手にくれてもいいでしょ? アンタ貪欲すぎるわ! そんなんやからいつまでたっても下のもんが上に行けんでしょ!!」

「お前はクビや!」

「どこぞの大統領か!」

 何やら某大国を敵に回しそうなやり取りが続き、

「まあ、ええわ。VTRどうぞ」

「あーっ! ソレ俺のVですやん!?」

 さっさとV振りをする晩春さん。

 スタジオのモニターに映像が映し出される。


 あれ? この映像の場所見覚えあるぞ!?


 モニターに映し出されたのは、先日CM撮影で訪れたスタジオの第6倉庫だった。



 

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