第398話 お互いさまの迷宮
「それにしても修兄と2人だけで話す機会、最近ちょっと多くなりましたよね」
確かにそうかもしれない。
この関係以外にも会社の関係、旅行の関係、研究室所属の関係等色々あって今年度は結構2人だけで話し合っている気がする。
「マンションの部屋は賑やかだからな。2人きりで話すには適していないし」
「修兄の部屋は大体誰かお邪魔してますからね。ルイスか詩織ちゃんか世田谷さんか」
確かにそれもあるな。
「部屋が増えたら少しは静かになるかな」
「どうでしょうか。修兄はもてますからね」
「そう思った事は無いけどな。単に立場上話しやすいだけだと思うぞ」
香緒里ちゃんは少し首を傾げる。
「風遊美さんや詩織ちゃんはともかく、世田谷さんはどうなんでしょうか」
「あいつの好みは良くも悪くも尖った人間だ。うちの学内だと、強いて言えばオスカーちゃんだとさ、あいつの好きなタイプ。自分で言っていた」
香緒里ちゃんは吹き出した。
「それは……確かに尖った個性ですね」
「良い奴なんだけどな、上野毛は」
頭もいいし性格も悪くない。
ただ女装が好きで、性愛の対象が
「どっちにしろ由香里姉やジェニーと同居だし、香緒里ちゃんと2人だけでというのは難しいよな。部屋のレイアウトも結局東西逆になるだけで同じだしさ」
「私と2人だけで、なんて修兄も考える事もあるんですか」
何か微妙な口調で聞かれる。
「限にこうして2人で話しているだろ。結局香緒里ちゃんに色々頼っているし、これからも色々頼るだろうしさ」
「私が頼ってばかりいるんですけどね。この前の研究室の件だって」
「そうでもないさ」
この辺はいつも思っている事なのですらすら話せる。
「俺のほうが1年早く生まれたからそういう機会が多いだけ。実際今ここで学生会の部屋うんぬんなんて話しているけどさ。俺を学生会に呼んだのは本当は由香里姉ではなくて香緒里ちゃんだろ。今の俺があるのはある意味そのおかげだしさ」
「知っていたんですか」
香緒里ちゃんの声、少し驚いている。
俺は頷く。
「入って半年後位かな、由香里姉に聞いた。『私は修は修らしく学生生活やっているようだし、誘わなくてもいいかなと思っていたんだけどね。香緒里に説得されたんだよ』って。お陰で色々あってさ、きっと今の楽しさの9割位は香緒里ちゃんのお陰だな。ありがとう」
これはいつか言おうと思っていたのだ。
随分と遅くなってしまったけれど。
「でも修兄には入学当初の課題からお世話になったし、この前の研究室を決める時だって結局私が聞く前から色々調べたりしてくれたみたいだし、一方的にお世話になりっぱなしです。このバネ関係だって、結局9割は修兄のお陰ですし」
でも、俺はいくらだって反論できる。
いつも思っている事だから。
「もし香緒里ちゃんが俺の1年先輩だったらやっぱり俺に同じ事をしてくれたんじゃないかな。俺はそう思うけど違うかな?
それに今こそ俺はそこそこ魔法を使えるけれど、本来は俺は魔法が使えない筈なんだ。魔力も魔法を使えない一般人と同等だったし、入校時の因子調査結果でもそういう結果だったしさ。
それでもこの学校には来たかもしれない。地元から出たかったし。
出る理由としてこの高専は色々ちょうどいいしさ。ここしか無いという独自性と地元から遠いという立地条件と学費生活費の安さと難関校というブランドと。
でも今みたいに色々魔法で作ったり研究したりはできなかったな。これもきっと香緒里ちゃんのお陰だ。俺と香緒里ちゃんの間では魔力が融通可能ってのがその証拠だろ」
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