第338話 研究室ゼミ第一回(2)
「成程、皆よくもまあ見事に方向性の違う物を持ち込んだな。量産前提に現有理論盛り込みに現有理論プラスに現有理論無視か。それに魔力操作自慢まで加わってると。
教官として戦力に不満は無いな」
新地先生は苦笑する。
「次からゼミに入っても問題は無いだろう。長津田、これを作ったという事はどうせ今までの関連論文全部読んで自分なりのまとめ作っているんだろ」
「はい」
俺は頷く。
共同研究になるとは思わなかったが、一応今までの関係は自分なりにパソコン内にまとめている。
「他人に見せる形に頑張って変換しろ。必要ならプロジェクター等も使用前提で構わない。他に実物をつかったり、この部屋内で使える方法は何を使ってもかまわない。
期間は約10日間。再来週の火曜3~4限の2限使って発表をしてもらう。一通り解説して質疑応答できる程度まで要点に絞って配布用レジュメを作っておけ。英語の概要とかは作らなくてもいい。
来週の火曜3~4限と金曜4限は僕がゼミの進め方や論文の書き方、魔法工学の現在の状況について解説する。以降、再来週の金曜4限が等々力、その次の火曜が高井戸と恩田、次の金曜が世田谷に担当してもらう。
発表して解説する題目と日程は後でまとめて明日朝までにここの研究室のHPに掲載しておく。ここのHPは大学公式からでも高専公式からでも辿れるから自分で明日以降確認してくれ」
いきなりガンガンとゼミの進行について入っていく。
ただこのテンポの良さは俺は嫌いではない。
後で確認できるように日程はWeb閲覧可能なようにしてくれると言うし。
新地先生は年齢自体まだ若い。
確か30そこそこ位で、高専卒業から魔技大に転入し魔技大院へ進んだ俺達の先輩だ。
専門は研究室名と同じ魔法制御科学で、それを応用した部品レベルの魔法工学機器をいくつも開発している。
ちなみに俺が漁った論文の1割以上は新地先生執筆のものだった。
ヘリテージ1号に使用した理論も3割程度は新地先生の論文由来だったりする。
「さて、これからはこの部屋のルールや機器の使用方法について説明する。また開発に必要な機器があったら早めに申請しておくこと。よほどの事がない限り期待に添えると思う」
それは研究用の費用だろうか。
それとも新地先生のポケットマネーだろうか。
この人も大量のパテント持ちで金持ちらしいからな。
まだ独身だし。
補助魔法科助教の彼女がいるらしいけれど。
さてと、俺も必要機器が何かあるか確認するか。
ざっと目に発表用には問題は無さそうだ。
50インチクラスの液晶ディスプレイが3枚と高性能サーバと発表用ノートパソコン。
あとでOSと使用可能ソフトを確認しておこう。
工作機械はこれ1台で切削、穴あけ、研磨、切断なんでもござれのマルチアーム付万能魔法工作機械が1台。
杖程度の大きさの物を作るのはこれで十分だ。
協定特区外使用禁止な魔法溶接機能までついているし。
「資材等のストック等は何処ですか」
「隣の準備室に入っている。現在の在庫はあとでHPで確認してくれ。
あ、それと各自HPの記載を確認の上、自分の公開鍵を作って研究室にメールしておいてくれ。メール到着後1日以内に研究室HPと主要機器のパスワード、研究室の公開鍵を貼付したメールを返送する。一応魔技大のSNSもかなり高度な暗号化をかけてあるが念の為だ。公開鍵暗号方式ならこの特区外にもほぼ安全にメールできるから。
なお今日の説明ややることリストについてもHPに記載しておく。それでもわからない事があれば随時研究室のメールかSNSにて連絡してくれ。24時間以内に回答なり対処なりする」
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