第247話 希望者2人は見た顔だ

 やっと週の終わりの金曜日。

 そして例によって午後の学生会室。

 俺、香緒里ちゃん、ジェニー、ソフィー、ルイスの5人で暇潰し中。


 なおソフィーはロビーと一緒にいるのを諦めた模様だ。

「一緒にいても何の会話も無いです。ずっと作業してます」

 との事だ。


 と、ネット作業中のジェニーが顔を上げる。

「学生会希望者2人、30秒後れす」


「お、やっと来たか」

 待ちに待っていた新人だ。

 香緒里ちゃんがいそいそとお茶の用意を始める。


 だが、30秒たってもノックの気配がない。

 ジェニーの方を見ると、ジェスチャーで「静かに」と人差し指を立てている。

 なので俺達は反応を待つ。


 1分位してから、控えめなノック音が響く。


「はい、ろうぞ」

 ジェニーが扉を開けると、入ってきたのは見覚えある女の子2人組。


「こんにちは」

 とポニーテールの方がにこやかに挨拶しているが、ツインテールの方は無口だ。


「空いている処にすわってくらさい」

「2人共冷たい紅茶でいいですね」

 と、3年生2人に流れるように誘導されて席に落ち着く。

 そして目の前には香緒里ちゃんとっておきの冷たい紅茶。


「アールグレイですか。いい香りですね」

「わかってくれて嬉しいです。冷たいとどうしても香りが飛ぶので」


 香緒里ちゃんと平然と会話しているポニーテールをツインテールの方がつつく。


「実は2人共、ここでお世話になろうかと思いまして」

 ポニーテールの方がそう言って、そして2人で頭を下げた。


「いいのかな。ここは基本的には学生会だけれども。攻魔研とか魔分研とか、魔格クラブの方が攻撃魔法を鍛えるという意味ではより会っているんじゃないかな」


 ジェニーが『折角来たのに余計な事を』という感じで俺の方を見ている。

 でもこれを聞いておかないと本人の意思や志向と合わなかった場合が可哀想だ。


「実は、今言われたところは全部回ってみたんです。ねえ、愛希」


 ツインテールの方が頷く。

「入学式から今日までで一通り回ってみた。攻撃魔法研究会はどうも仲間内でつるんでいるという感じで尖り方が足りない。魔法分析研究会は尖った強いのもいるが個々に活動する感じで入るメリットが感じられない。魔法格闘クラブは名前こそ戦闘向けっぽいが単なる仲良し会にしか見えなかった」


 ルイスがにやりと笑う。

「厳しいな。でも確かにその傾向はあるな。よく見てる」


「もともと愛希は入学前からここに来るつもりだったんですよ。でもWebだとルイス先輩がデフォルメされすぎて今ひとつわからないので、実力と性格を見てみたいと。なのであのWebページを参考に、生意気ながら道場破りをやってみました」


「あれは申し訳なかった。言葉もない」

 ツインテールの方がそう謝罪。

 何か前に来た時と全然違う感じだ。


「僕は構わない。似たような事を去年奈津希先輩にやったし。でも本当にここでいいのか」


 2人は頷く。


「なら改めて自己紹介する。僕はルイス・ヴィンセント・ロング、攻撃魔法科2年で学生会会計担当だ」


 続けてソフィー、ジェニー、香緒里ちゃん、俺と簡単に自己紹介する。

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