第241話 でかい外人の正体は

 久しぶりの作業だ。

 でも旅行前に全員参加でバネ作業をやったので、納期遅れとか急ぎの品は無い。

 ただ春休み後は学生会行事が続く。

 だから出来れば4月分のノルマはこなしておきたい。

 そんな訳で在庫確認も含め、がしがし作業を行う。


 基本はジェニーが工場から送られてきた材料バネの開封と確認。

 香緒里ちゃんが魔法付与。

 俺が製品審査と梱包。


 なんとか4月分ももう少しという処まで来た。

 時計を見ると12時少し過ぎ。

 もうお昼タイムだ。


 今日は学生会新2年生組はポスターや学内広報の印刷や掲示板貼りをしている。

 合流して一緒にマンションに帰って昼ご飯にする予定だ。


 とすると気になるのは例の外人のバイク作業の進展だが……

 キャブのジェット調整をしているのを見ると、もう少しかかりそうだ。


「何なら俺はもう少しここにいるから、皆が来たら先に行っていてくれ」

 小声で香緒里ちゃんに頼む。


「修兄、随分気に入ったようですね」

「そりゃそうだ。魔法工学科でも真に機械いじりが好きなのは少ないしな。肩入れしたくもなるだろ」


 一応彼には聞こえない程度の声量で喋る。

 と、ジェニーが顔を上げた。


「学生会室をでたところれす」

 新2年生組も間もなく到着か。

 今日作業した分を整理して台帳を確認していると、聞き慣れた声が近づいてきた。


「香緒里社長、こっちの進展はどうですか」

「詩織ちゃん、社長は止めて欲しいです」

「へっへっへっ、社長ですしスポンサー様ですから」


 詩織ちゃんは揉み手しながらそんな事を言っている。

 で当然ルイスとソフィーちゃんも一緒に……


 あ、ソフィーちゃんが何かバイク修理中の外人を見て固まった。

 そして俺には聞き取りにくい早口の英語で何か言っている。

 え、どういう事。

 2人は何やら早口の英語でやり取りしているが、俺にはよく聞き取れない。

 そこでジェニーが途中で説明してくれる。


「どうもあの人が、ソフィーのBFのロビーさんのようれす」


 えっ。

 確かによく考えると、ソフィーの言っていた特徴には合致するけれど、でも。


「てっきり修兄より年上だと思っていました」

 香緒里ちゃんの言うとおりだ。

 身体がでかくてごついだけでない。

 全体的に雰囲気が俺より年上おっさんという感じなのだ。

 それに今年高専入学なら、バイクの免許はどうしたんだろう。

 特区登録だから自分名義だと思うのだが。


「積もる話もあるようですし、今日はテイクアウト買ってここで食べましょうか」

 香緒里ちゃんの提案に全員が賛成する。

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