第172話 全裸の侵入者

 夜中、ふと違和感を憶えて目が覚めた。

 隣に明らかに人の気配を感じる。

 今日マンションに泊まっているのはいつもの面子プラス風遊美さんと奈津希さん。

 2人は客間を使っているので俺のベッドは俺1人だけ。


 ではこの気配は。

 掛布団の動きからして、俺の掛布団の上に誰かが寝ているようだ。

 俺は横を見て、ぎょっとした。

 詩織ちゃんだ。


 詩織ちゃんこいつは時々俺のベッドに勝手に出現する。

 大体2日か3日に一度位の頻度だろうか。

 普段は無視してそのまま俺も寝ている。

 でも今日はちょっとまずいというかやばい状態だ。

 俺の掛け布団の上に、裸で寝てやがる。


 こんな処見られたら何を言われるかわかったものじゃない。

 というかこんな状態で寝れる程、俺は聖人じゃない。


 俺は布団を出て念のため状況を再確認。

 せめてパンツくらい穿いているかと思ったが、完全に全裸だ。

 高校1年相当にしては発達遅めの身体。

 うっすら生えている下の毛まで見えてしまった。


 だめだ、これは。 

 部屋を出てリビングへ。


 誰か起きていたら詩織ちゃんあいつの排除を頼もうと思ったのだが、誰もいない。

 皆今日のイベントで疲れてお眠りのようだ。

 今日はソファーで寝るかと思った時、反対側の手前のドアが開いた。

 香緒里ちゃんだ。


「どうしたの、香緒里ちゃん」

「修兄、何か困っていますか。そんな気がしたので起きてきたのですけれど」


 勘、じゃなくて俺の思考をキャッチしてしまったのかな。

 だとすれば申し訳ない。


「ごめん。起こしてしまって」

「それはいいです。どうしたんですか」


 俺は自分の部屋の方を視線で示す。


「侵入者が出て眠れない状況になってな。適当に措置してくれると助かる」

「侵入者?」

「見ればわかる」


 香緒里ちゃんは俺の部屋の扉をそーっと開け、中を確認した。

 そしてため息をつく。


「随分好かれているんですね」

「俺というより、ベッドのマットが好かれているんだろ」

「取り敢えず状況は分かりました。ちょっと用意してきます」


 香緒里ちゃんは自分の部屋に一度戻り、1分ちょいで色々持って戻ってきた。

 そのまま俺の部屋に入り、何やら作業をしている様子。


「いいですよ」

 香緒里ちゃんがそう言ったので、俺は自分の部屋に入る。

 詩織ちゃんは香緒里ちゃんの短パンとTシャツを着せられ、ベッドに伸びていた。


「サイズがやや大きめですけれど。それにしても、これだけやっても起きないのは大したものだと思います」

 俺もそう思う。


 と、服を着せられても起きなかった詩織ちゃんがまぶたをひくひくさせる。


「うー」

 何か唸っているぞ。

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