第23話

「いやぁ、死ぬかと思った」

医者が生まれた子供、世継ぎとなるエイドンを産湯に漬けて綺麗にしている。

言わずもがな、男の子しか生まれないので、名前は妊娠が発覚してから割とすぐに決まっていた。

背中には、小さいながらも真っ赤な蝶が浮かんでいる。


「び、びっくりしましたぁ……ぼくにはできそうもありません」

ショウタの何倍も疲れた様相で、セツが肩を落としながら告げる。

「それは困りますね。子供は何人かほしいので」

出産が済んだときいて一時的に仕事を中断してきたアベルが、セツの肩を抱きながらもはっきり言うと、セツはげんなりしてみせる。


「何はともあれ、おめでとうございます、ショウタ殿」

「里帰りが決まったらいつでも声かけてくれ。近衛隊を出すからな」

アオとカインにも祝福され、疲れはあるが幸せな気分になる。


「里帰り、かぁ……」

アルルを出て二年以上経っていた。

ファロやエイドンを家族に紹介するのが少しこっ恥ずかしいが、自分の生まれ故郷を見せたい気持ちもある。


「お前の両親に会えるのは楽しみだな」

ファロがちゅっと頭のてっぺんに口づけを落とした。

「うん、そうだね……ありがとうみんな、応援してくれて」


異国から移住し、結婚や出産を乗り越えられたのも、周囲の人間が支えてくれたからだと実感する。

今はすっかり自分の国となった蝶国で、愛する夫と我が子の成長をみるのが楽しみだ。


「……なんかほんと、幸せだな」


天国の姉上。

無事に甥っ子が生まれました。

俺は、ちょー幸せです。


ふと窓の外を見たら、快晴の空が広がっていた。

姉が祝福しているようで、ショウタはそのまぶしさに目を細めた。

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蝶ノ国ノオハナシⅡ 沙汰野乃子(さた ののこ) @satanonoko

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