164


「もちろん彼女に聞いて了承は得たさ…一応お前にも聞け、と言われたからな」


「??彼女が良いと言うのなら俺にその決定を覆すだけの権利など無いだろう?」



男の説明を聞いて青年はまたしても理解出来ないといった様子で首を傾げて言う。



「…まあお前が良く使うから、単なる報告という意味合いなんじゃないか?」


「…ああ、なるほど」



そう深い意味は無いと思うぞ…と男が言うと青年は納得したように呟く。



「それで、何に使うんだ?」


「ああ、いや…ちょっと魔導協会で出張があってな…念には念を、備えあれば憂い無しと言うだろう?」



青年が問うと男は適当にそれっぽくごまかす。



「…所属したばかりで出張か…まあ『魔導召喚師』は歴史上初だから仕方がない」



お前も大変だな…と青年は男をねぎらうように笑いかける。



「…まあ帰る時になったら連絡するから、その時は彼女への報告を頼む」


「ああ、だがこの前みたいに深夜とか夜中は止めてくれよ?」



男が頼むと青年は皮肉みたいな冗談で返した。



「…なるべく気をつけるさ…ああ、そう言えばその時の礼と言ってはなんだがお土産だ」



男は苦笑しながら告げると袋から何かを取り出して青年に差し出す。



「…コレは腕輪…か?」



細く丸く暗いメタリックブルーのリングを見て青年が問う。



「そうだ『ストロングリング』というらしい」


「…ほお、付与効果のある装飾品とは珍しい…」



男の言葉に青年は意外そうに呟き受け取った腕輪を月明かりに翳して眺める。



「…鈍い青色とは…なかなかクールだ」


「名前から察するに装備するとパワーが強化されるのかもな」



青年が少し嬉しそうに言うと男が笑いながら予想した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る