第122話 外で待ってる
「うん、このくらいで大丈夫だと思うよ」
「ふぇー……結構採ったねー」
「スキル増えてる」
「ほんとだー! <採取>だって!」
お、ハスタさん達も取得できたみたいだ。
そういえば、最近スキルを全然見てなかったけど、僕のスキルってどうなってるんだろ……?
そう思って確認してみれば、結構上がってる……。
確か前に確認したときは……<採取Lv.11><調薬Lv.13><戦闘採取術Lv.11><鑑定Lv.3><予見Lv.1>だったっけ?
それが今は、<採取Lv.14><調薬Lv.15><戦闘採取術Lv.12><鑑定Lv.4><予見Lv.1>になってる。
予見はどうやったら上がるのかわかんないからどうしようもないけど、他は軒並み上がってるみたいだ。
魔物とは戦ってないけど、<戦闘採取術>は採取行動でも上がるって、兵士のおじさんが言ってたし、たぶんそれで上がったんだろう。
「アキ」
「ん? なに?」
「<採取>って効果は?」
「あーえっとね……。採取したものが、素材に使えるかどうか分かるようになるのと、採取手順がなんとなくわかるようになる、かな?」
「そう」
いつもと同じ無表情で頷いて、ラミナさんは足元に自生していた草を抜いた。
その草を見ながら、首をかしげてはまた違う草を抜くを繰り返す。
5回ほど繰り返してなにか分かったのか、頷いてからその草を僕に渡してきた。
「これ、使える?」
「あ、えっと……。うん、
「そう。あげる」
「え、あ、ありがとう?」
そう言って、彼女は僕の手に強躍草を握らせて、地面に座って休んでいるハスタさんの方に歩いていく。
僕は渡された強躍草をインベントリにしま――うのをやめて、ラミナさんの方へ駆けだした。
「伏せてっ!」
そう……僕が声にした直後、ラミナさんの頭めがけて何かが来る。
しかし間一髪、といったタイミングで彼女の身体が崩れ、その斜線上から外れた。
「……姉さん。ありがとう」
「うん! 急に引っ張っちゃってごめんね」
「大丈夫」
なるほど、ハスタさんが腕を引っ張ったのか……。
だから、崩れたみたいに避けたのか……って違う!
「2人とも、準備して!」
戦闘は得意じゃないけれど……、僕らの中では一番プレイ時間が長いんだ!
だから、僕がしっかりしないと……!
「……2人は、気配察知とか持ってたりはしないよね?」
それぞれの武器を手に、背中合わせに周囲を警戒しつつ、小さな声で問いかける。
「アキちゃんごめん……。取ってない」
「ラミナも」
「そっか……」
森の中は樹が多く、視界が悪い。
加えて、さっきの攻撃は銃弾のように、何かが飛んできていたことを考えると……。
「気配察知が無いなら、森の中は危険だし……ここは退いた方がいいね」
「そんな!? 敵がいるのに!?」
「姉さん。アキの言う通り」
「ラミナまで!?」
「ハスタさんが戦いたいのはわかるけど、さっきの攻撃を見るに、僕らの確認できない位置からの攻撃も出来る相手だよ。姿を確認出来ない以上、相性が悪すぎる」
「うー……、わかった」
ハスタさんも納得してくれたみたいだし、こうなったら善は急げだ。
僕は装備を草刈鎌から木槌に変更して、一歩前に出てから、口を開いた。
「2人は先に退いて。来た道をまっすぐ走れば、数分もかからないはずだから」
「え、でもアキちゃんは?」
「僕は少しだけ後から逃げるよ。一気に逃げて後ろを攻撃されても困るしね」
「危険」
「大丈夫。2人には見えないだろうけど、心強い味方がそばにいてくれるから」
そう言うと、僕のそばで浮いていたシルフが微笑む。
僕にはシルフが付いてくれてるから、1人じゃない。
「だから大丈夫。――行って!」
「でも……」
「姉さん。……行こう」
「ら、ラミナ!? ……あぁ、もう! アキちゃん! 森の外で待ってるから!」
意を決して走り出したラミナさんの後を追うように、少し遅れてハスタさんが走って行く。
後ろは振り向けないけど……、僕は2人に心の中で、ありがとうと呟いた。
「……さてと、ごめんね。シルフ、ちょっと付き合って」
「はい! お任せください!」
見えない敵に、飛んでくる攻撃、正直……どうしようもない。
けれど、もちろん死ぬ気もない。
2人が森を出るまでの数分……数分だけでいい、ここで食い止めよう。
それが……今、僕が出来る唯一の勝利条件だから!
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