第506話 ◆アリシアの大冒険(その17) 古代竜VS霊獣

◆アリシアの大冒険(その17) 古代竜VS霊獣


ヴイーヴルとロキ、アレッタ、ディアを探しながら、あたしと3匹の霊獣は森の中を奥へ奥へと進んで行った。


それにしても肝心な時にディアは、いったいどこに行ってしまったのだろう。


確か洞窟の中で魔法陣を描いていた時は、隣にいて興味深くじっと見ていた。


と言うことは、あたしが意識を失っていた間に、どこかに行ったということだろうか。



ヴイーヴルの足跡や木々がなぎ倒された形跡は無いけれど、霊獣たちは迷いもなく同じ方向に進んで行く。


あたしは彼らの能力を信じ、黙ってそれについて行くだけだ。


追跡を開始してから1時間ほどが経ったころ、初めてあたしにもヴイーヴルの気配を感じとることができた。


それは今までに経験したことが無い、胸が強く締め付けられるような恐怖感だった。



それは進むにつれてどんどん強くなり、お守りを握りしめていなければ、叫びだしてしまいそうなくらいになっていた。


もし、こんな状態でヴイーヴルに遭遇したら、あたしはいったいどうなってしまうのだろう。


からだがカタカタと小刻みに震え、息をするのも苦しい。 


背中に冷たい汗が流れていく。



***


辺りの木々はいつの間にか無くなり、あたしたちは大きな岩がゴロゴロしている場所を進んでいた。


目の前には噴煙をあげる大きな火山が見えている。


周りにある小さな噴気孔からは、蒸気が激しく噴き出ている。


あたしは強くなる恐怖心と硫黄の臭いで、吐きそうになっていた。



みんな、お願いだから少し休ませて。


風の流れで硫黄の臭いが薄れた場所で、あたしはとうとう音を上げた。


霊獣たちは、あたしの声に反応し立ち止まった。


が、彼らの目を見たあたしは、ヒッと悲鳴をあげた。


あたしは、その目が何を物語っているのか瞬時に理解したのだ。


そう、ヴイーヴルは既に近くに居る!



あたりをゆっくり見回して行く。


するとハッキリは見えないが空間が歪んでいるというか、前方に陽炎のようにゆらゆらと巨大な何かが動いている。


ヴイーヴルは、人の目には見えないのか?



あたしはファーブニルの背中から飛び降り、近くの岩陰に身を隠した。


もちろんこんな岩陰に隠れていたって、身を守ることなどできないのは分かっている。


ただ、ヴイーヴルと霊獣たちの戦闘の邪魔ならないようにしたのだ。



しかし本音を言えば、恐怖心から逃げたかったのかも知れない。


なにしろ、自分の本能がヤバいから早く逃げろと言っているのだ。


こんなことは、生まれて初めてだ。




ギャォーーッ


いきなり大きな咆哮が響き渡り、ついにヴイーヴルと霊獣たちの戦闘が始まってしまった。


もう、逃げ出すことは出来ない。


果たして自分は、生きて帰ることは出来るのだろうか。




***


ねえ、アレッタのロキもディアも助けなくていいから、アリシアを逃がしなさいよ!


えっ?  セレネさんってずいぶん薄情な人だったんですね。


だって、アリシアにもしもの事があったら嫌なのよ!


アレッタとかロキなんて、知り合いでもないじゃないの!


でも、ヴイーヴルを放っておいたら、いずれ世界は滅びますよ。


それなら、ヴォルルさんやこのお城の仲間がいれば何とかなるじゃない。


アリシア一人じゃ絶対に無理よ。


では、金貨一万枚で取引しましょう。 もしセレネさんが応じるなら、ハッピーエンドにしますぜwww。


ボカスカッ


あぅ・・


あんたってサイテー!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る