第504話 ◆アリシアの大冒険(その15) 霊獣召喚

◆アリシアの大冒険(その15) 霊獣召喚


ヴイーヴルがアレッタにかけた魔法(呪い)は、アレッタがある年齢に達したとき、自分の命を我が身の復活に捧げよというものだった。


だがアレッタはそんな細かなことまでは知らなかった。


ただ自分がある年齢に達してしまうとヴイーヴルが蘇ると思い込んでいた。


だから自分がその年齢になる前に自らの命を絶つことで、ヴイーヴルの復活を阻止しようとしたのだった。



では、どうしてヴイーヴルは復活してしまったのか。


それはとても簡単なことだ。  アレッタはヴイーヴルが復活する年齢について、ある勘違いをしていたのだ。



アレッタとヴイーヴルは双子の兄妹である。


アレッタは当然ヴイーヴルより後に生まれた。  そしてアレッタは自分が生まれた時間を基準に考えていた。


一方、ヴイーヴルは、自分の生まれた時間を基準にしていた。


この差はわずかと考えがちであるが、アレッタが生まれるまでには1日以上のずれがあったのだ。


つまりヴイーヴルが復活する時間より後にアレッタが命を絶ったということになる。


またそのこと事態が、ヴイーヴルの呪いそのものだったともいえるのである。




***


あたしが魔法陣を描き終えた直後に、突然洞窟が大きな音と共に激しく揺れだした。


まさか、ヴイーヴルが復活したというの?


だとしたら、アレッタは間に合わなかったということ。



あたしは、霊獣を呼び出してヴイーヴルと戦わせることで、アレッタを助けようと思っていた。


もし間に合わなかったとすれば、アレッタは、まだ無事だということなのだろうか。




どのみち、霊獣は復活したヴイーヴルを倒すために呼び出そうと思っていた。


だからあたしは、すぐに魔法陣の中心に立ち、召喚呪文を詠唱し始めた。


そしてあたしは、気が動転していたこともあって、召喚する霊の名前を3つも読み上げてしまった。


呪文の詠唱が終わった途端に魔法陣が光輝き、あたし体から魔力が流れ出して魔法陣の中心部分に渦を巻きながら吸い込まれて行く。


あああぁーー


大量の魔力が魔法陣に吸い込まれ、体の力がどんどん抜けていく。 直ぐにその場に立っていることさえ出来ず、魔法陣の中で四つん這いになり必死で耐える。


しかし、霊獣3匹を召喚するための魔力である。  魔法陣は容赦なく、あたしの魔力を吸収し続けていった。 


あたしは意識が朦朧とする中で自らの死を覚悟した。


・・・

・・


うぅぅっ・・


あたしは、いったいどのくらいの時間、意識を失っていたのだろう。


体が鉛のように重く、なかなか起き上がることができない。


どうやら魔力は空っぽのようだが、やはり霊獣は召喚出来なかったのか・・・



ブォーーーッ


いきなり背後から突風が吹き荒れ、スカートが思いっきりめくりあがる。


どうせ洞窟の中だし誰も見ていないけど、乙女としてはやはり恥ずかしい。


重い体に鞭を打って、よいしょと起き上がり裾を直そうと振り向いて驚いた。


なんとそこには呼び出した霊獣が3匹、並んであたしを見下ろしているではないか。


そっか、さっきのは突風じゃなくて、あんたたちの鼻息だったのね。



あれっ? でも何だか少しちっちゃくない?


あたしの魔力が足りなかった分、Sサイズにでもなったのかしら?


まあ、小さいと言ってもヴイーヴルの骨と比べてのことだけど・・・



果たして、フェンリル、ファーブニル、リヴァイアサンの三匹は、あたしのいう事を聞いてくれるのだろうか。


と、とりあえずファーブニル、あたしをあなたの背中に乗せなさい!


するとフェンリルがいきなりあたしを咥えて、頭を下げたファーブニルの上に落とした。


ちょっとぉ・・ 服に涎がついたじゃないの!


でも背中じゃなくて、見晴らしの良い頭の上に乗せてくれたのはナイスよ!


なんとかいう事を聞きそうなのでひと安心する。



それじゃあ、みんな。 アレッタとロキを助けに行くわよ!


グウォーーー


ギャォーーッス


ウォーー


言ってから後悔した。  こいつらはめっちゃうるさい!





***


ちょっとぉ!  アリシアをかっこよく書きすぎてない?


えこひいきは、よくないわよ!


またセレネさんの被害妄想ですか。


え? あたしの言ってること間違ってなくね?


ねえ、本当に忙しいんで絡まないでくれます!


ちっ


あーー もお・・ グミあげますんで、勘弁してください。


うん。 許した。


・・・

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