第472話 ◆魔物との戦い (その3)
◆魔物との戦い (その3)
前日の魔物たちとの戦いで勝利を収めたセレネ軍は、今日中に魔物の掃討を終えるべく入念な準備を行っていた。
湿地帯でもキビキビと動けるように、雪国で使う「かんじき」に似た履物を全員が装備したし、毒蛇対策として、特に下半身と両腕にプロテクターも付けた。
兵士たちには、銃を一丁ずつと弾切れの際に使う短剣、負傷した際に使う薬と包帯なども支給した。
リアム隊長は、もうこの時点で完全なる勝利を確信していた。
***
兵士たちは、朝食を済ませると5つの小隊に別れて、扇状に広がりながら湿地帯を北へと進軍しはじめた。
さすがに昨日の戦闘で、多くを討ち取ったためか、魔物の姿はどこにも見当たらない。
軍は扇状に展開して進んでいるため、1時間ほどでもう隣の部隊とはかなり距離が開いてしまった。
この扇状の展開が後に大きな裏目に出てしまう。
一人ひとりの間隔は開くが横一列で進んだ方が、何かあった場合に連携が取りやすかったはずだ。
あれほど場数を踏んだリアムが、なぜ扇状の進軍を選んだのか・・・
5つの小隊のうち、中央はあたし、右翼はサリエル、左翼はアリシア、残りはミミとリアムがそれぞれ同行していたが、メイアとヴォルルさんが欠けていたのも敗因のひとつではあった。
それに、お城で留守番をしてもらっているシルフとブラックもつれて来ていれば、ここまで酷い状況にはならなかっただろう。
***
各小隊は昼過ぎには、北の湿地帯の最北部近くまで到達していた。
リアム隊長殿、もう北の湿原の端まで到達しました。 あと少しで国境ですので、そこから先へは進めません。
おう! わかった。
それでは、ここで食事を取ったあと付近を偵察し異常がなければ、引き揚げることにする。
はっ!
同じころ、その他の小隊も、国境近くで同様に昼休憩を取っていた。
火を熾し、スープを温めていると
ドドドドドッ
遠くから地響きのような音が、すごい勢いで近づいてくるではないか。
なんだ なんだ?
何かがこっちに向かって来るぞ!
早く戦闘態勢をとるんだ!
いや、こんな平坦地ではダメだ。 木が生えているところまで後退するぞ!
いや、もう間に合わない!
ドドドドドッ
わーーーーっ
ぎゃーー
怒涛の如く突っ込んで来たのは、レッドドラゴンの大群だった。
この恐竜の顔をした超大型の鳥類は体高が6mはあり、駆ける速さは時速70km以上という。
肉はうまいらしいが、とても人間が狩りなどで倒せる相手ではない。
兵力を5小隊に分散していたため、どの小隊も戦力不足であったし、セレネたちも一人で1小隊の兵士たちを守りながら戦うのは不可能だった。
結果、多くの兵士が怪我を負い、魔物の討伐隊はこれ以上この地に留まって戦うことが出来ない状況となった。
この状況をなんとか打破しなければ、けいちゃんを助けに行けない。
そこで、あたしとサリエルとアリシアでいろいろ検討し、結論としてヴォルルさんを連れ戻してメイアと二人でしばらくこの地域に留まってもらうことにした。
つまり、ヴォルルさんがこの地に留まっていれば、魔物たちは怯えてこっちに攻めてこないという最初の状態を保つのだ。
村が魔物に襲われなければ、この状況でも当面は問題ないだろう。
ヴォルルさんがいないと、天界に行けない問題は実はそんなに深刻ではない。
今ここにいるのはヴォルルさん1/10であって、ヴォルルさんの1/10のパワーを持っている分身だ。
天界に行く時に、残りのヴォルルさん(確か世界には200人以上いる)に集まってもらえばいいのだ。
あたしは、後処理をリアムにお願いし、サリエルとアリシアの三人で一足早くお城に帰ることにした。
満月までは、あと残り6日である。
***
ねぇ
ギクッ な・・なな・なんですか?
結局、北の湿地帯には、行っても行かなくても同じだったってことよね?
ま・・ まあそういうことでしょうかね。
ふ~ん
ビクッ ビクッ
ねぇ ビビってるの?
いえ、ただ怖いだけです。
チッ それをビビってるって言うのよ!
はぁ・・
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