第415話 ◆モッフルダフのけじめ

◆モッフルダフのけじめ



モッフルダフが連れて来た背の高い青年は、なんとヴァンパイアだった。


あたしが、モッフルダフの所為で酷い目にあったのは、かぎ爪恐竜に襲われた水晶の谷とか海賊の宝がある島とか巨大烏賊に襲われて船が木端微塵になった事とか数知れない。


今回も職業は医者だというので、喜んで移民の手続きをニーナに説明させたら、あの騒ぎである。



もちろんモッフルダフが居なかったら、今のあたしがないのは分かっているけど、それとこれとは別の話しだ。


あたしは、いま猛烈に怒っている。 しかも、文句を言いに行ったらトンズラしてたし。


このぶっつけようのない怒りを、いったいどうすればいいのだろうか!


・・・



モッフルダフは、セレネの国のお隣の島、そうルイたちに移住を勧めたあの島の近くにあるサンゴ礁に来ていた。


何故かといえばセレネの城で大爆発があったので、急いで見に行ってところチェイスが壊れた城の方から逃げて来るのを目撃したからである。


モッフルダフは一目で大体を察し、城を修復するためのドロマイトを採掘しに来ていたのだ。


島で採掘できるドロマイトは、良質なセメントの原料になる。


モッフルダフは船尾にある格納庫の扉を開けると、中からマンモスに似た動物二頭をサンゴ礁の浅い海に引き出した。


モッフルダフは、そのマンモス似の動物を使ってドロマイトの採掘をしようとしているのだ。


まあ、重機の代わりというところである。  実はこの動物も商品で、ある国からの注文で届ける途中だったのだ。



ドロマイトの採掘を行いながら船の積載量に到達したら運搬しを繰り返す。


5往復ほどすれば、再建するには十分な量になるだろう。


もしも余ったら、それも商品として売ればいい。


・・・


そして、ドロマイトで満杯になった船で港に戻ったところ、セレネが桟橋で仁王立ちになってモッフルダフを待っていた。


これは、そうとうお怒りのようですね。  モッフルダフは覚悟を決め、タラップを降りていった。



ちょっと、モッフルダフ!  チェイスのことで何かあたしに言うことがあるでしょ!


まあ、言い訳になるので、わたしからは謝罪のみとさせて下さい。  本当に申し訳ないことをしました。  ごめんなさい。


素直に謝罪されてしまうと、この後文句が言いにくくなる。  案の定セレネも言葉に詰まる。


それで、お詫びの印としてドロマイトを採って来ました。 あと何往復かしますので、これでお城の修復をしてください。


ドロマイトって・・  もしかしてセメントの原料?


はい、そうです。


うわー  助かるわー  どうもありがとう。  実は財政難で、修復は諦めようと思ってたんだ。


ホホホ それはお役に立てて良かったですよ。


ん?  いやいや、お城が壊れたのはモッフルダフがヴァンパイアなんて紹介してくれるからじゃないの!



えっ? チェイスはヴァンパイアだったのですか?


まさか知らなかったの?


はい。 そんな気配とか行動とか全く無かったので。


モッフルダフ、あなたチェイスをどこで拾って来たのよ!


えーと、ここに来る前の港で、彼の方からセレネ王国へ渡りたいとコンタクトして来たのですよ。


船の中ではとても好印象でしたし、ヴァンパイアなんて微塵にも疑わなかったです。


そうなんだ。  あたしは、なんだかモッフルダフに怒りの矛先を向けたのは間違いだったなと思い始めた。



ねえ、モッフルダフ。 久しぶりの会ったのだから、ドロマイトの運搬が終わったらみんなでパァっとやらない?


あたしの方で準備するから。  ねっ、いいでしょ?


もちろんです。  よろしくお願いします。  きっとアルビンたちも喜びますよ。



こうして、ヴァンパイア事件は一件落着したのであった。





ねぇ、セレネ。  預金全部下ろして来たけど、これで足りるかな?


そうねぇ・・・ 全然足りないけど、これで許してあげるわ。


よかったぁ  早くあたしのお部屋も直してよね。




※なおこの後、全額アリシア名義で貯金し直してあげたことは、セレネの名誉のために記しておく。

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