第382話 ◆鉄道馬車

◆鉄道馬車


双子の宇宙人、ルイとティアはUFOが爆発してしまったため、自分たちの星に帰れなくなってしまった。


なので今は、あたしたちのお城に住まわせてあげている。


ティアはUFOに乗っているときは、偉くツンデレというか女の子にしては口が悪かった。


そして、兄のルイにべったりのブラコンだった。


が、UFOが壊れてしまいお城に来てからは、まるで別人のようにおとなしくなってしまった。


もしかしたら落ち込んでいるのかと思い、アリシアと二人でティアに数々のイタズラをしかけて笑かそうとしたが全てが失敗に終わっている。



これじゃあ、おまえたちがティアを虐めてるだけじゃないかとみんなから怒られて、お城の入口の通路に1時間も正座させられてしまった。


よかれと思ったことが裏目に出るという、よくあるパターンである。  てへっ。


・・・


ティア、どう鉄道馬車に乗った感想は?


最悪な乗り心地だわ。 あたしの星では、鉄道はリニアモーターで動いていたから振動なんて全く無かったし。


そうなんだ。 あたしが住んでた国では、リニアってまだテスト中だったし、ティアの星の科学は随分進んでいるんだね。


セレネ、何そのリニアって?


う~ん 説明が難しいなあ・・


簡単に言うと、磁石の反発力で鉄道馬車が浮いて、馬がいなくても凄いスピードで走るのよ。


あーー それそれ。  ティアって頭いい!


プッ セレネがバカなだけじゃないの。


このーー  あたしがハーフエルフの弱点を知らないと思ってるの!  あたしは、アリシアの両耳を持ってくにょくにょしてやった。


あひゃうん  やめっ  やめて・・  お願い・・・


ふんっ  わかったか、愚か者め。


あ゛ーーー  お゛ーーー  ぐわーーーー   エルフの耳をくにょくにょすると10分程度悶え続けるのが面白い。


・・・


鉄道馬車は、石畳に刻まれた溝に沿ってガタガタと走り続け、終着駅の飛行場に着いた。


飛行船は、既に係留用のロープを下ろして、巻上機を使ってゆっくり地上へ向けて降下し始めている。



シルフ、もうすぐ葵さんに会えるね~


コクコク



大きいだけの乗り物なのね。  ティアが飛行船を見上げて、ボソッと呟く。


これでも船に比べると凄く早く移動できるようになったんだよ。


いま着いた飛行船が飛んで来た国まで戻るとしたら船だと1年半近くかかるんだ。 あの飛行船でも1ヶ月ちょっとだよ。


あたしたちの船なら、10分もかからないわ。  ティアが久しぶりに、ふふん顔で自慢する。


わぁ やっぱり、すごい乗り物だったんだね~。 ←過去形


がくっ ←ティアが崩れ落ちた音



セレネ、人が降りてくる。


飛行船が地上まで下りて来てタラップが接続され、飛行船のドアが開いた。


左右から係りの人がタラップをしっかり押さえ、その中を乗客がゆっくりと降り始めた。


葵さんの姿は、まだ見えない。


今回の乗客は130名ほどいるらしいから、降りてくるまではけっこう時間がかかるんだろう。


シルフと二人で、タラップを降りてくる人をじっと見ていると・・



えっ  やばっ!


あれは、エリージャ伯爵とフネットさん。 それにサステマさんと・・・  ア、アイデンさんまで!


な、なんで、あの人たちがあたしの国に?  まさか・・・


セレネ、早く帰った方がいい。  シルフが心配そうにあたしを見る。


ダメだよ。 葵さん夫妻がまだ降りて来てないもの。


でも、帰りの鉄道馬車が一緒になる。


乗客が130人もいれば、伯爵たちと同じ鉄道馬車に乗らなくても済むんじゃないかな?



鉄道馬車は1台で20人しか乗れないため、タラップを降りて来た順に乗り込み、満員になると首都の中心部へ向けて出発していく。


だから葵さんたちが、もう少しあとに降りてくれば、伯爵たちが乗った鉄道馬は先に出発してしまう。


そうなれば、自分たちが伯爵一行と顔を合わすことはない。



見れば伯爵たちは、既に鉄道馬車に乗り込んでいる。



あっ セレネ。 葵だ!


今度は、タラップに懐かしい葵さんの姿を発見する。  笑顔は無いが、きっと長旅で疲れているのだろう。


伯爵を乗せた鉄道馬車が出発したのを確認して、葵さん夫妻を迎えにタラップまで走っていく。


おーい  あおい さーん。


あたしが手を大きく振りながら近づくのを見つけた葵さんが破顔した。



セレネさん、元気にしとった?


うん、もう元気過ぎて、困っちゃうくらいよ。  


今回は、無理ば言ってごめんなさいね。


いえいえ、どうぞお気になさらず楽しんで行ってくださいね。


ありがとぉ。


それじゃ、今日から泊まっていただくお宿に案内するので、鉄道馬車に乗りましょうか。



こうして、葵さん夫妻とあたしたちが乗った鉄道馬車も、首都の街を目指して走りだした。




伯爵一行とアサシン葵がついにセレネ王国に入国してしまいましたが、この先いったいどんな展開になるのでしょうか。


「命に危険がおよぶ暑さ」で作者の体が弱っております。  この先、投稿間隔がかなり空くかも知れません。 ←言い訳か? (8月5日)

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