第375話 ◆たくさん捕まえたった

◆たくさん捕まえたった


さて、お隣のガラパゴス似の島へ食材調達・生け捕りツアーでやって来た気の毒な参加者たちは、上陸早々トンボ鳥の洗礼を受ける。


ダダダダダッ 


クェ~~


長い足に短い胴、その上にトンボのようなギラギラ光る大きな目玉がある頭が特徴的な動物が、大群で参加者目掛けて駆けてくる。


どうやら人懐っこい性格らしいこの生き物は、近くまでやって来るとしばらく静止したのち、その目玉をボヨヨ~ンと飛び出してくる。


あたしも、これで絶叫したのだが、ニーナは気絶したらしい。


ツアー参加者はトンボ鳥(あたしが名付けた)の大群に取り囲まれて、1時間ほど目玉ボヨヨ~ンをやられ続けたそうだ。


そのあと、キャンプ設営チームはテント張りをしている最中に、しきりに「もう帰る、もう帰る」とつぶやいていたと報告にある。


生け捕りチームはというと、リーダーのミミさんは流石に獣人目ねこ科だけのことはあって、ティアとルイに的確に指示を出しながらトンボ鳥2羽をさっそく捕獲していた。


これは、あたしのチーム編成能力の賜物ではないだろうか。



第一の悲劇はテント張りが終わったあとの設営チームで起きた。


飲み水を探しに密林へ足を踏み入れたニーナとアリシアは、例の巨木の上から粘液糸(太さは縄だけど)でぶら下がり、下を獲物が通るともの凄い勢いで飛び掛かって来るナメクジのようなヤツに襲われたのだ。


こいつらは刺身にすると超美味いのだが、普段はもの凄く臭い。


しかも顔が人間のように目、鼻、口がついていて、おっさんの笑い声に似た鳴き声を出すのが不気味なのだ。


ワハハ  アーハハハッ


こん感じで、笑いながら木から次々に落下してくる。


ギャーーー 気持ち悪いーーーー!


助けてーーー!


思わず走って奥地に逃げ込んでしまったアリシア一行を今度は吸血ヒルが襲う。


ベチャッ


ひゃーーー


ニーナ、なんか落ちて来たーー  ねえ取って・・・


チューーーー


あ゛っ・・ あ゛・・


キャーー アリシアさん、しっかりしてーーー。


ほんと、行かなくて良かったと思いましたよ。  ええ、ほんとに。


今回はニーナが同行していたので危うく命拾いしたが、この時アリシアは体の半分の血液を吸い取られていた。


ミイラ一歩手前の状態だ。 エルフは生命力が強い。 もしも人間だったら死んでいただろう。   



そして、これからがほんとうの地獄の始まりだった。


彼らは、あたしが見たことがない、あたらしい生き物に次々と遭遇したのだ。



アルマジロに似ているが象ぐらいの大きさで、ひたすら回転しながら突進してくる回転アルマジロ。


羽を広げると2m超えの蛾の化け物。  鱗粉に毒がある毒蛾。


見た目がエロ過ぎる猿の仲間と思われる動物。  うっふ~ん。  見とれていたリアムに糞を投げて来たそうだ。


単純にでかいだけの蜘蛛(3m超え)。  糸を吐きかけられたら身動きできないうちに体液を吸いつくされる。


植物のくせに歩き回り、蔦で鞭うってくる食人植物。  M属性の人には堪らないかも。


海岸の岩場にいた、巨大フナムシ。 大量に飛び跳ねている気持ちの悪さは鳥肌もの。


マングローブが生い茂る海岸に生息する、特大ヤシガニ。  こいつは美味い。  



これで分かったが、あの島に生息している生き物は、みんなでかい!  そして全てが気持ちが悪い!



もう少しで、設営チームは全滅するところだった。


それに反し、生け捕りチームの活躍は素晴らしかった。


トンボ鳥のつがいが5組。  クェ~~


ナメクジおやじ 10匹。 ワハハ  アーハハハッ


特大ヤシガニ 25匹。


回転アルマジロのつがい1組。  肉が牛肉のA5クラスに匹敵。



1日で上記の大収穫だった。 これは、ミミさんのリーダー敵性が功を奏したのだと思う。


加えて、キャロンさんをも上回る猫パンチが強力な武器になったのだ。


なにしろ一撃で獲物を気絶させてしまう。 あとは、ルイとティアが縄で縛れば生け捕り完成である。



ただ、もう一つの悲劇は、コリン君が同行しなかったため、現地での料理が丸焼きしかできなかったことだろう。


しかも、アリシアが調味料類を忘れたので、急遽メイアが海水を炎で蒸発させ、塩をつくって食べた。


しかし、これがミネラル塩で肉にすごく合ったらしい。


その後なんとメイアは、自分で回転ルマジロ一頭を倒し、半分たいらげたそうだ。  どうして太らないのか是非知りたい。


・・・


そして1週間が過ぎたところで、迎えの船が浜に到着したときは、ノアの箱舟かと見間違うほどの動物が積み込まれた。


用意した農場の家畜小屋も、飼育して増やす前にいっぱい状態になってしまうほどで、すぐに再拡張が必要だ。



これで、飼育がうまくいけば、国民の食卓も一層華やかなものになるだろう。




このあと、生け捕りにした動物が柵を壊して逃げてしまい、生態系を壊し始めてたいへんだったことは、公にはされていない。

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