第338話 ◆んぎゅぅ~
◆んぎゅぅ~
なんという勘違いをしてしまったのだろう。
あたしの目の前には、真剣な顔でアンディが座っている。
そして今、あたしはこの世界で初めての航空会社設立の最終実行計画書を読んでいる。
なのに先ほどの勘違いが、超恥ずかしくって内容がなかなか頭に入って来ない。
この企画書の素案は、あたしとアンディが時間をかけて練りにねって来たものだ。
検討していく中で、様々な問題や課題があがった。
翼竜が滑空して飛ぶため飛行船のエンジンに向いていないのが判明し、速度アップの問題の壁にぶち当たったがこの国の北の国境近くに、もにゅぱ~の生息地があるのを発見し、今では試験的に人工孵化から育てて人間に懐くところまで来ている。
開業資金も投資家でもあるヴォルルさんが60%、あたしが30%、まりあ先輩が10%を出資することが決まっている。
あとはこの実行計画書に不備が無ければ、一気に開業まで突き進むのだ。
そして実現できた際には、もにゅぱ~の飛行能力次第ではあるが、船の10分の1の時間で大陸間を移動できる。
つまり船で1年かかったところを1ヶ月ちょっとで行き来できるようになるのだ。
・・・
あたしは、実行計画書に赤鉛筆でチェックを入れながら隅々まで確認していった。
昼過ぎから始めて、もう5時を過ぎている。
途中、コリン君が戻って来てお茶を淹れてくれた。
もし、この実行計画書のチェックが完了したらアンディは真ん中の島へ戻って、すぐさま計画書の内容を実行に移すだろう。
そうなったら、コリン君も一緒に連れて行ってしまうのだ。
コリン君が幸せになるのなら、喜んで送りだしてあげなければいけないのは、頭の中では分かっている。
だけれど、近くにいるのが当たり前になっている人が急にいなくなってしまうのは、心のダメージが大きい。
しかも、それはじわじわとボディブローのように効いて来る。
あたしのような寂しがり屋には、それがどこまで耐えられるか分からない。
現に今でも、計画書のチェックに支障をきたしている。
ごめんね、今日は何だか効率が悪くて。
いいえ、最後のチェックですし、セレネさんのペースでやっていただいて結構ですよ。
うん。 でも今日中に終わりそうにないので、アンディさんは部屋に戻っててください。
明日の午前中には、何とか終わらせますから。
分かりました。 でも、セレネさんも先日倒れたばかりなので無理をしないでくださいよ。
1日や2日余計にかかっても僕の方は問題ありませんから。
アンディさん、ありがとう。
・・・
そして次の日、何とかチェックを終えた計画書には大きな問題は無く、当然アンディは真ん中の島へ帰る事になった。
少し遅くなってしまいましたけど、朝食を持って来ました。
セレネさんの大好物のカリカリベーコンとふわふわオムレツですよ。
コリン君、いつもありがとう。
あと、牛乳は必ず飲んでくださいね。
はい、はい。 そんなにあたしの面倒ばかりみてないで、コリン君も旅の支度があるんじゃないの?
旅って、どこにですか?
あれ? だってアンディさんと真ん中の島へ一緒に行くんじゃないの?
いやいや、行きませんよ。
なんで? だって、あなたたちって・・・
アンディさんは、これから会社を立ち上げて軌道に乗せなければならないじゃないですか。
そんな大事なところに僕なんかが行っても邪魔になるだけです。
何を言ってるの! そんな時だからこそ、コリン君あなたが彼の傍で支えてあげなければ駄目なんじゃないの。
それは問題ないです。 なにしろ第一婦人のヴォルルさんが、しっかり面倒をみてくださいますから。
ブーーーーーッ
あたしは飲んでいた牛乳を思いっきり噴き出してしまった。
コリン君、それってどういう事なの?
つまり、僕はですね・・・ アンディさんがこの国に来た時の現地妻ってことです。
んぎゅぅ~ ←セレネが発した謎の声
ヴォルルさん、アンディの第一婦人&セレネの第四夫人って?
作者のキャラ設定をはるかに超え始めたヴォルルさん、このあといったいどこまで行くのだろうか・・・
次回へ続く・・・ んぎゅぅ~
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