第333話 ◆予約済みのアンディ
◆予約済みのアンディ
あたしとメイアが一番奥にある船倉でドラゴンのお母さんを発見した時には、もう船が傾き始めていた。
メイア、この船もう直ぐ沈むよ! どうやって助けたらいい?
相変わらずあたしは、こういう時に頭が回らない。
海から行くのがいい。
海からって・・・ そうか! 水中なら浮力もあるし。
いま穴を開ける。
メイアはおばちゃんからドラゴンの姿になって、床板を破り始めた。
あたしはその間に持って来ていた水と携行食糧を、お母さんドラゴンの口に無理やり押し込んだ。
バリ バリ バリッ
大きな音とともに床に穴が開く。
メイア、船底が見えた。 あともう一息よ! 頑張って!
まかせろ~
メイアは頭から船底に渾身の体当たりをした。 すると流石に頑丈な船底に亀裂が入って海水が勢いよく流れ込んで来る。
その亀裂部分にメイアがもう一度体当たりをすると大きな穴が開いた。
よし、お母さんドラゴンを穴から海の中に出すよ!
メイアが鎖を咥えて引っ張り、あたしがお尻から押す。 もっともあたしの力なんかあっても無くても同じだけど気持ちの問題だ。
それにもしかしたら火事場の馬鹿力みたいな奇跡が起こるかも知れないじゃないか。
お母さんドラゴンは相変わらず無反応だ。 意識があって体に力が入っているのといないのでは、こっちの力が何倍も必要になる。
現に海底に沈んで行こうとするお母さんドラゴンを、海面に向けて引き上げようとするが、なかなか上がっていかない。
メイアは何ともないけど、あたしは肺呼吸なんだよ! 息がぐるじい・・・
一旦息継ぎのために海面に出ようとしたあたしの横を何かが通り過ぎて行く。
魚の群れ? いや違う。 人魚だ!
・・・
あたしが息継ぎをしている間に、たくさんの人魚たちがお母さんドラゴンを海面まで運んでくれた。
辺りを見回せば商船は、まさに船首が海中に沈むところだったし、軍艦の方は氷の塊の中に閉じ込められて沈黙していた。
そして、ロロ君は居なかった・・・
え~と これからどうするの?
この一言は、あたしの失言の中ではベスト3に入るものとして、永遠に語り継がれることになった。
まさに、おまゆうの典型的なものである。
でも、海の上で死にそうなお母さんドラゴンをどうしたらいいのか、マジで分からなかったんだ。
でも、この問題はあっさりと解決してしまう。
人魚たちが、どこからか大亀を連れて来てくれて、お母さんドラゴンをその背中に乗せてくれたのだ。
あのお母さんドラゴンを縛り付けていた忌々しい鉄の鎖は、アンディが引きちぎって外してくれた。
やっぱりアンディは頼りになるわね。 あたしは、アンディの腹筋や上腕二頭筋をうっとり眺める。
セレネ、セレネ。 アンディはもう予約済よ!
なっ・・ アリシアまさか・・・
何言ってんのよ! アンディがプロポーズした相手知らないの?
ええーーーっ! プ、プロポーズ? もしかしたらヴォルルさん?
ブッブーー 大ハズレーーー!
え、だれ、だれ? だれなの?
やっぱり教えない!
えーーー! ねぇ、コリン君は知ってるの?
え・・・ まぁ・・ 知ってるっていうか・・
ロロ君が行方不明だけど、面倒なことになりそうなので次回へ続く・・・
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