第327話 ◆ガラパゴスかよ!
◆ガラパゴスかよ!
セレネ王国に「温泉施設と温水プールを造るぞ」プロジェクトは、あたしの肝いりで全員が一丸となって取り掛かっていた。
みんなが利用しやすいように首都圏になかった源泉を造るところから始めて、今は建物や温水プールを造っている最中だ。
どうやらコンクリをうっている最中は、コンクリが固まるスピードとの兼ね合いで、中断することが出来ないらしい。
だから、みんなはこの作業が終わり次第、ロロ君とメイアのお母さんの救出に協力してくれることになっている。
それまでは、あたしとロロ君の二人でお母さんを探すのだ。
まずは、ロロ君のお母さんが連れて行かれてしまった場所まで行ってみるのが捜査としては順当なところだろう。
そこから目撃情報を辿りながら、追跡して行くのだ。
なにしろ、ドラゴンを乗せた馬車だから人目につかないはずは無い。
ドラゴンお母さんが捕まってしまった場所は、ロロ君の話しを聞きながらモッフルダフから買った世界地図で確認したところ、意外にもここから近い島であることが分かった。
それは、この大陸から東へ600kmくらいの海上に浮かぶ小さな島(小さいといってもオーストラリア大陸くらいある)だった。
なぜ、こんなところにお母さんドラゴンとロロ君が居たのかと言えば、メイアと初めて会った岩山の谷一帯が突然の噴火で棲めなくなり、同じような環境を求めて点々と移動している途中に、この島に立ち寄っていたのだ。
流石にこの広大な海を自分で飛んで渡ることは出来ないので、お母さんドラゴンも人間の姿に変化して船で移動していたとロロ君から聞いて、その人間姿のお母さんドラゴンをちょっと見てみたかったなと思った。
これで大まかな場所が特定できたので、あたしは旅の支度を整えてロロ君と目的地の島へと出発した。
島までは600kmであり、この距離ならロロ君でも飛べるというので、あたしはロロ君に乗せてもらうことにした。
メイア以外のドラゴンに乗るのはもちろん初めてだ。
ドラゴン姿のロロ君はメイアよりも一回り大きい。 やっぱり男の子だからなのかはよく分からない。
メイアも大きさは自由にできると言っていたし、おそらく自分が一番落ち着く体のサイズに変化するのだろう。
飛ぶスピードもメイアより、少し速く感じる。
でも、このことはメイアには決して言ってはならない。
なぜなら、絶対に妙な対抗心を剥き出しにするに違いないからだ。
ロロ君の飛行速度は、新幹線と同じくらいの時速350kmだ。
これなら、2時間もしないで島の端までは着くことができる。
あとの移動は、島の大きさが東西4000km、南北3600kmと結構な大きさがあるので2~3日は必要だ。
今回は、ロロ君のお母さんを見つけて助け出すことが目的なので、モッフルダフから買った携行食糧を持って来た。
少量で栄養満点の優れものだ。 味はちょっとイチジクの実に似ている。
栄養価もカロリーも高く、ドラゴンなら角砂糖1つぐらいの大きさで1日分もある。
・・・
この島は天界に近いため、残念な事に人間タイプの生き物はほとんど住んでいなかった。
そしてあたしたちが、この島に降り立って初めて遭遇した生き物は、今までの大陸や島々では見たことがないものだった。
なにしろ、全てが気持ち悪い。
最初に海岸で見たのは、フラミンゴのような2本の長い足で砂浜を走り回っている生き物で、足の上に小さ胴体と頭がついている。
足の長さが3mはあるのに、胴と頭が50cmくらいしかない。 目はトンボのような複眼で、テニスボールくらいある。
こいつがあたしの方に向かって駆けて来たときは、気絶しそうになった。
近づいて来てあたしをじっと見つめてから、最後に目玉だけをボヨ~ンと飛び出させて時には、島中に響き渡るような悲鳴を上げてしまった。
次に出会ったやつは、3日間も夢に出て来た。
こいつは毛虫のように巨木の上から粘液糸(太さは縄だけど)でぶら下がっていて、下を獲物が通るともの凄い勢いで飛び掛かって来る。
それが巨大な、なめくじみたいで、おまけに超臭い!
しかも顔が人間のように目、鼻、口がついていて、人の笑い声に似た鳴き声を出すのだ。
どうもこの島はガラパゴス諸島のように多くの固有種がいるようで、おそらく大陸と陸続きになった歴史を持たないのだろう。
現に、この島に来るとき上空から眺めた海は海流が激しくて、とても船が航行するのは無理そうだった。
まだまだ、気味の悪い生き物がたくさんいたけど、それは追々説明して行こうと思う。
そして島に着いてから2日目の午後、手がかりらしきものを見つけた。
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