第295話 ◆女王アンジェリクの国と天使の輪
◆女王アンジェリクの国と天使の輪
その土地土地には、独特な匂い(雰囲気)がある。
あたしは、修学旅行で行った山陰地方の雰囲気が好きだった。 同じ日本なのに山陰地方は何か神様が直ぐ傍にいる気配がする。
そして、アンジェリク女王が治めるこの地方は、山陰地方の匂いに似ている気がするのだ。
一言で言い表すは難しいけれど敢えて例えるならば、濃い緑の神秘的な匂い(雰囲気)がする。
この国の表玄関になる港は裏手に山が迫っていて、海の匂いと山の濃い緑の匂いが混ざりあって鼻腔をくすぐる。
そして長い船旅にいったん終わりを告げるため、船はその港へと滑り込んで行く。
船上から港を見下ろせば大勢の人たちが、あたしたちを出迎えてくれていた。
その中には、兵士たちに守られたアンジェリク女王の姿もあった。
またかつて、この国の魔王の呪い(魔王の女王への最後の愛情)を解き、魔物達の支配を終わらせた英雄たちを一目みようとする人たちも沢山集まっていた。
船が接岸するとタラップから女王様の前まで、赤い絨毯がクルクルと敷かれていく。
あたしたちは入港前に着替えた一番上品な服でタラップを下り、女王様が立っているところまで絨毯の上をゆっくりと歩いて行った。
アンジェリク女王様、お久しぶりです。
セレネさん、みなさん。 またお会い出来て嬉しいです。
そうだ、女王様に紹介しないといけなかったです。
こちらが、ヴォルルさんで、こっちがサリエルです。
まあ、お二人ともお美しい。 はじめまして、この国の女王アンジェリクです。
ヴォルルです。 よろしくお願いします。
セレネの妻のサリエルです。 以後お見知りおきを。
あっ、あたしもセレネの第四夫人です。 ヴォルルさんがはっとした後、直ぐに張り合うように付け足す。
ちょっと、二人とも。 女王様がびっくりされてるじゃないの。
セレネさん・・・ いったい何があったのですか?
いや~ 話すと長くなりますので、この話はあとでゆっくりと。 アハハハ・・・ ←笑って誤魔化すつもり。
・・・
お城までは美しい儀装馬車に乗せてもらい、まるでお姫様になったようだ。
お城に到着すると直ぐに客間に案内され、少し休んだ後に歓迎パーティが催された。
パーティーは女王様のお人柄が出ていて桟橋に出迎えに来ていた人々も場内に招かれ、あたしたちとも歓談して楽しいひと時が過ごせた。
アンジェリク様、あれからお国の方はどうでしょう。
おかげ様で作物も豊作ですし、漁業も昔のような活気を取り戻しつつあります。
それは良かったですね。
魔物たちも大人しいですし、あれからお城に戻って来て一緒に働いてくれるものもいるんですよ。
それは、嬉しいことですね。
ええ、あの部屋には、まだ少し夫の思念が残っているのかも知れません。
魔王さまも今のアンジェリクさまとこの国の発展を見て安心していると思いますよ。
そうですね。
近隣の国に不穏な動きとかはないでしょうか?
ええ、セレネさんのご紹介でマーリア・テレイデ女王様と同盟を結ばせていただいたので、今のところは他国が侵略してくる様子はありません。
それは良かったです。
あたしたちもこれからマリア先輩じゃなかった、マーリア女王様の国へ寄る予定があるんですよ。
まあ、それではぜひ、よろしくお伝えください。
はい♪
・・・
今回は急ぐ旅であるので水と食料を補給し、直ぐに出発となる。
食料の買付けは、あたしとアリシアで行くことにしたのだけれど、もれなくサリエルがついて来た。
港についた時は目の錯覚かと思ったのだけれど、人混みの中だとサリエルの頭の上に天使の輪が現れるのが分かった。
輪があると妙に天使っぽさが増す。
そして天使の輪を乗せたサリエルを見ると、人々がその場に跪いて祈りを捧げはじめるのだ。
ちょっとサリエル、その輪なんとかならないの?
いけませんでしょうか?
いやね・・なんというか・・・ この状況じゃ居づらいと言うか・・・買い物ができないよ。
あたくし達天界に仕える者にとって、信者は迷える子羊なのです。
こうして祈りを捧げることを妨げることは出来ません。
OKわかった。 それじゃ、ここからは別行動にしよう。 ただし夕方までにはお城に戻って来てね。
えっ・・ ちょっとセレネさまってば、ひど~い。 あたしは信者よりセレネさまの方が大切なんですよ。
一緒に行きますから、ちょっと待ってください。
なんだ、輪っか引っ込められるんじゃん。
これ、布教のための広告塔みたいなものなんです。 人がたくさん居る場所では、輪を頭の上に乗せるようにと神様から言われてまして。
ふ~ん。 サリエルは、あたしのところに嫁に来てくれたけど、まだ変態神様との付き合いとかあるの?
・・・ え~と。 そのことについては、特に考えていませんでした。
それじゃ、今後は布教活動なしで!
はれっ? あたしそれでいいのかな・・・
いいの、いいの。 気にしない。 あたしん家は無宗教だったしね~。
サリエルも無宗教の家に嫁いで来たんだから、無宗教でよろしく!
・・・う゛ーーー わ、わかりました。
そして後に、サリエルに信仰を捨てさせたあたしにトンデモない罰が当たるのであった。
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