第294話 ◆永遠の女子高生、海に向かってバカヤローと叫ぶ!

◆永遠の女子高生、海に向かってバカヤローと叫ぶ!


こっちの世界に来てから不思議に思うことがたくさんある。


中でも、時間の流れ方が全く違うらしいことが何となく分かってきた。


うまくは言えないけどこっちの暦の上で1年が経っても、それがイコール自分自身の寿命カウントにはなっていない。


つまり、あたしが向こうの世界での寿命が80歳であったとして、こっちの世界で80年過ごしても、寿命は1年と減っていないのだ。


だから、こっちに住んでいる人たちは何百歳とかなんだろう。


実際のところはまだハッキリとは分からないが、だいたい100年が向こうの1年くらいのようだ。


つまり、あたしもこっちに来てからまだ一月も経っていないって感じになる・・・


ムフフ もしかして永遠の女子高生?  ←見た目だけの話しですけどね~


どうりでお肌なんかは、ピッチピチのままだし。  正直このことがこっちの世界に来て一番嬉しいかも♪


・・・


アンジェリク女王の国までは、まだまだ遠い。


自分んで望んでいたことだが、さすがに毎日海しか見えないのは超退屈だ。


景色が変われば少しはいいのだろうけれど、来る日も来る日も水平線を眺めていると気がおかしくなる。


今日も夕陽を見ながら大声で バカヤローーーー! と大声で叫んでいたら、しばらくみんな寄って来なかった。



そんなことをサリエル(歳が近くてまともそうだから)に愚痴っていたら、ならば魔法の勉強をしたらどうかと言われた。


アドバイスというほどのことではないけど、あたしの魔力はヴォルルさんから分けてもらったので相当な強さがあるらしい。


いまのあたしでは、そのパワーの千分の一も出せてないのだそうだ。


サリエルやアリシアも練習相手になってくれると熱心に言うので、あたしも退屈凌ぎにやってみることにした。


ただし、前回の件もあるのでアリシアには対戦するときは絶対に手加減するよう念を押しておいた。



魔法の修得メニューは氷系魔法と防御魔法、それに飛行魔法の三つと盛りだくさんだ。


飛行魔法は、空中を漂うくらいは出来ているので、一番簡単かと思っていたらとんでもなかった。


なにしろ思った方向へ飛んで行けない。 やたら手足だけバタつかせ空中で溺れているようだとシルフにケタケタ笑われてしまった。


なんだよ、シルフみたいに羽が生えているわけじゃあるまいし、人間が空を飛ぶのがどんだけ大変か分かってるのかとプンスカ怒ってしまった。


この後、シルフとブラックシルフが二人して熱心に教えてくれたのだけど、なかなか上達しなくて悲しくなった。



意外だったのは、氷系魔法だった。  これはコツと言おうか、それがドンピシャで結構面白いように上達した。


わずか3日で自分の目の前になら2mくらいの氷の壁を築けるようになった。


でも、遠くの物を凍らせるのはなかなか難しくて出来ない。



一番できないのは、防御系魔法だ。  これは何度やっても作った光の壁が簡単に破られてしまう。


強度は、まだ人のパンチを防げる程度で、とても魔物の攻撃に対処できるものではない。



これは、あとで分かったのだけど、放った魔法を強くする方法の一つとして、大きな声で呪文の名前なんかを叫ぶのがいいらしい。


そういえば、アリシアもあたしを殺しかけた爆裂魔法を放った時、デェスパレイト ファイアーーー!! とか叫んでいた。


あれは、いまでもトラウマなんだ・・・



こうして、あまり上達しない魔法の練習を重ねているうちに、アンジェリク女王の国が水平線の彼方に薄っすらと見えて来たのだった。

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