第284話 ◆サリエル、ストーカーになる
◆サリエル、ストーカーになる
ヴォルルさんの別荘にメイドさんが居なくなってしまったので、あたしは今、仕方なしにヴォルルさんの家に戻って来ている。
ヴォルルさんがリリーさんを酷い目にあわせて、えっちなネガを取り返し、サリエルとあたしの結婚話しも破談にさせ、ブラックシルフからの一連の事件は全て解消された。
と思っていたのだけれど、なんと今度はサリエルがストーカーになってしまった。
直接の被害は無いのだが、買い物に出かけると下手な探偵のように尾行してくるし、あたしがヴォルルさんの家にいるときは玄関の前をうろついている。
ときどき目が合うと泣きそうな顔をして、立ち去るのが少し可哀そうだなと思ってしまう。
それでも、あと2か月ちょっとでサリエルが天界に帰れば、もとの平和な生活に戻れるのでそれまでの我慢である。
・・・
ジャラッ
あの金の鎖は、サリエルが3か月の期限を付けて巻き付けたので、その日がやって来ないと取れないのがわかった。
ちょっとショックだったけど、それもあと2か月で元通りの生活になる。
あっ、いやまだアリシアがおかしくなったままだった。 でもシルフ達に例えるなら元のアリシアはブラックアリシアだし、ほんとうなら今のアリシアの方が望ましいのかも知れない。
でも、アリシアとは長い間一緒に過ごして来たので、あたしは元のツンデレアリシアがカワイイと思っている。
この忌まわしい金の鎖が取れたら、アリシアを早くララノアの所へ連れて行かないといけない。
セレネ~ 抱っこ~!
そして、もう一人・・・ しばらく会えなかったので、メイアが幼児返りしてしまった。
幼女から幼児っていうのが微妙かもしれないけれど、明らかに赤ちゃんぽくなった。
あーー よしよし。 はいっ、だっこ~。 あたしもついつい甘やかしてしまう。
こっちは、ほおっておいてもしばらくすれば元通りになるだろう。
・・・
今日は天気も良いし、みんな退屈しているようなので、朝からお弁当を作ってピクニックに行くことにした。
お弁当作りには、アリシアとメイアも手伝ってもらう。
ただしハンバーグ以外はゲロマズ飯のメイアさんだから、出来上がったおかずなどをお弁当箱に詰めるのを中心に手伝ってもらう。
意外なのはアリシアで、なんでも結構上手に作る。
しかも今はエンジェルアリシアなので、料理しているエプロン姿もなんだか眩しく感じられる。
そしてヴォルルさんは、ピクニックなのにワインを大量に持っていくようで、ワインに合う料理というリクエストで一気にハードルを上げられた。
ピクニックの目的地は、港が一望できる小高い丘の上にある小さな公園にした。
今の季節は、お花が丘一面に咲いてとてもきれいらしい。
こんなによい公園なのに普段はあまり人も来ないらしく、金の鎖が取れないあたしや酔っ払うと騒がしいヴォルルさんにはとても都合がよい所だ。
お弁当はメイアが食べる分も考慮して作った結果、ピクニックに出かけるというよりは、リヤカーに家財道具を積んだ夜逃げの一家みたいになってしまった。
でも、メイアが力持ちなので自分が食べる分は自分が運ぶので、それほど困らない。
ただし、傍からみれば幼女に大量に荷物を運ばせている虐待女と思われるので、注意しなければいけないのだ。
荷車にお弁当やらワインを積んで、メイアが引いていく。 荷車にはシルフとブラックシルフが、ちゃっかり乗って楽をしている。
そしてあたしはアリシアと手をつないで荷車の後ろを行く。 荷車にちょっと手を添えて、いかにも後ろから押している感を出すのを忘れない。
金の鎖が外れないので、だぶだぶのワンピを着ているため、歩いていると袖の部分が肩からずり落ちてしまう。
それを片手で直しながらテクテク歩く。
ときどき吹いてくる潮風が気持ちいい。
そして、今日もサリエルがついて来ている。
あたし達の後ろ50mくらいのところを建物や街路樹の陰などに隠れながら、ちょろちょろしている。
何度か声をかけようと思ったのだけれど、微妙な距離もあってついに公園に着いてしまった。
公園には、大きな木が3本空に向かって真っすぐにそびえ立っている。
そのうちの1本の木陰にシートを敷いて、持ってきたお弁当や飲み物を並べた。
ヴォルルさんは、公園につくと直ぐにワインを飲み始めた。
あたしは、少し汗ばんだ額をタオルで拭きながら、ココナッツジュースをゴクリと飲んだ。
ふぅ~ 気持ちいい~
丘の上からは、港町が一望できる。 小さな家々の赤い屋根がかわいい。
ふと、公園の隅っこを見ればサリエルが石の上にちょこんと腰を掛けている。
あたしは、ジュースを持ってサリエルに近づいて行った。
サリエルさん、ジュース飲みませんか?
あっ ・・ はい・・
サリエルは下を向いて座っていたので、あたしが声をかけるまで気がつかなかったようだ。
もうすぐお昼だし、お弁当もたくさん持ってきたので一緒に食べましょうよ。
いや・・ でも・・ 悪いし。
そんなに気にしなくていいですから。 大勢で食べる方が楽しいし。 ネッ?
ほんとうにいいんですか?
もちろんですよ! お弁当もたくさん作ってきましたし。
サリエルさんの顔がパァっと輝く。 あっ、天使さんの顔ってほんとうに光るんだ。
あたしはサリエルさんの手を引いて、みんなが居る大きな木の下へ歩いて行った。
これからみんなでお弁当を食べるので、次回へ続く・・・
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