第238話 ◆殺虫草爆弾
◆殺虫草爆弾
次の日、朝早くから殺虫草を浜辺まで運搬する作業が始まった。
今回メイアは、頼りにできないので、ヴォルルさん、アリシア、ニーナ、コリン君の4人の魔力を使って空中運搬する。
簡単に説明すれば、バケツリレーの要領だ。 ただし、この方法だと100m間隔として1回で進める距離は400mだ。
なので浜辺まで、これを20回ほど繰り返す。
メイアには、塩を作った時に使った木の実を拾って来てもらい、あたしはそれを割って殺虫液の入れ物を作る。
あたしにも殺虫草の液がかかってしまったので、メイアはあまり近寄って来ない。
取って来た木の実も、上空から落として来る。
あの時、もしも飛び散った殺虫液が目や口に入ったら失明したり死んだのかもと思うとちょっと怖い。
だから、殺虫液の扱いには十分に注意する必要があるのだ。
現に液がかかった右腕は、直ぐに水筒の水で洗い流したのに真っ赤に腫れている。
浜辺までの運搬が終わった殺虫草の液を全員で木の実に詰めて、しっかり蓋をする。
こうして出来た沢山の殺虫液入り木の実を、あたしは殺虫草爆弾と呼ぶことにした。
そして、殺虫草爆弾は明日、巨大蟻の巣穴とその周辺に上空から撒くのだ。
これで、蟻たちが液を浴びて全滅するか、臭いを嫌って遠くに逃げて行ってくれれば作戦は大成功だ。
翌日・・・
メイアは、相変わらず殺虫草の臭いを嫌がっている。
だから、今回の作戦からはメンバーから外すことになった。
つまり、ヴォルルさん、アリシア、ニーナ、コリン君とあたしで爆撃を行う。
爆撃と言っても飛行機で行うのでは無く、人手で行うのだけど・・・
各自、自分で飛びながら魔力を使って爆弾を浮かせて引き連れて行くのだ。
あたし以外のメンバーは魔力が高いので、どうってことが無いレベルの任務だけど、つい最近飛べるようになったあたしには、結構難易度が高い。
なので、爆弾の割り当て個数をみんなの四分の一にしてもらった。 実はこれでも30個近くになる。
飛びながら爆弾を浮かし、引っ張るのは凄く集中力が必要だ。
他の事に気を取られるとせっかく作った殺虫草爆弾を落としてしまいかねない。
巨大蟻の巣は、事前にニーナとアリシアが上空から探査し、穴の数と位置を絵図にしてくれたので、それぞれ分担分けしている。
あたしに与えられたミッションは巣穴3つの攻撃と、巣穴とあたし達の拠点方面とを分断するように、線状に等間隔で爆弾を落とすことだ。
他のみんなも同じように巣穴の直接攻撃と分断線状の延長上攻撃を行う。
それでは、まるきゅうさんまるに各自出発、ひとふたまるまるまでには作戦遂行の上、帰還するように!
お・・おぅっ! ・・・?
セレネ、それ何? アリシアが首を傾げて聞いて来る。
あーー これね。 一度やってみたかったんだよね。
ひょっとしてミリオタですか?
いや、コリン君何言ってるの? 違うから・・・ あたし違うからね!
出発前に余計なことを言うんじゃなかったな。 後悔先に立たずである。
ちょっと恥ずかしかったので、本当はあたしがミリオタだっていうことは隠しておくことにした。
かくして、全員がまるきゅうさんまる時に攻撃目標に向かって飛び立っていったのであった。
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