第233話 ◆開拓調査

◆開拓調査


初めての土地。


ここでは、土が農業に適しているか、水はけが良いか、川の水質、先住者や魔物の有無などいろいろな事を調べて行かねばならない。


水田や畑を作るため、地面を掘って土や岩や石の状態も確認する必要がある。 田んぼを作るのには、粘土質の土も必要だ。


あまりにも岩や石が多いと開墾が大変だし、酷ければこの土地は諦めなければならない。



・・・


あたし達は、救命用ボートに乗って入江の一番奥の砂浜になっている場所に上陸した。


上陸した地点から川を遡ってみる。  すると川には大きな魚が泳いでいて、まずは水質に問題がないことが分かった。


これなら石や砂や炭、灰などを層にして濾過装置を作れば、美味しい飲料水が出来る。


水路を作って田に水を引き、ついでに水車を回せば、粉引きや発電もOKだ。


土の状態もいい。  森もあるので腐葉土も十分あるし畑の方もなんとかなりそうだ。


森から木を伐り出して、ログハウスのような家は簡単に作れる。


次から次へと頭の中で、この地の開拓構想が浮かんで溢れる。


なんだかワクワクして来た。



セレネってば、ひとりでニヤニヤして気持ち悪いわよ!


アリシアは、まだあたしが船を降りるのを怒っているみたいだ。



メイアは草原を駆けまわっているが、背が高い草花に隠れて姿が見えない。


草がザザーーッっと揺れ動く所に居るのが辛うじて分かる。


キャロンさんは、木の上に登って居眠りを始めた。


ニーナはと言うと川の中に入って魚を追っている。  これはもしかするとお昼に川魚の塩焼きが食べられるかも知れない。


上陸早々に、みんないい感じだ。



セレネさん、本当にここに残るつもりですか?


薪を拾い行っていたコリン君が戻って来て、あたしの覚悟を確認して来た。


そうね、いったん落ち着こうと思ってる。


コリン君はどうするの?


僕ですか・・  まだ良く分かりません。


もっと世界中を回って、いろいろ見てみたい気もしますし、開拓生活にも憧れがあります。


そう・・  明日1日はモッフルダフに此処に居てもらうようお願いしたけど、明後日には出航してしまうわ。


ざっと見た感じ、良い土地みたいなのでシルフとニーナとメイアは、あたしと一緒に此処に残るよ。


そうですか・・・


コリン君は、船から持ってきた調理道具を鞄から出して並べ始めた。


セレネさん、火起こしお願いしていいですか。


OK、任せて。


あたしは、さっそく覚えたての魔法で薪に火を点けた。



ママ、見てみて大漁ですよ。 


ちょうどいいタイミングでニーナが川魚をたくさん獲って来た。


わぁ、それじゃあ塩焼きにしようよ。


枝をナイフで尖らせて魚に刺し、焚火の周りに並べて立てて行く。


魚が焼ける匂いにメイアが飛んで戻って来たので、みんなで大笑いした。


わたし、もう少し魚を獲って来ますね。


ニーナはメイアを見て、これじゃ足りないと思ったのだろう。


メイアも一緒に行って食べたい分だけ獲ってきな。 あっ、でも採り過ぎはダメだからね!


分かった~


あたしは、やっぱり人もドラゴンも陸地に住むのが正解なんだなあと、この時はっきり確信したのだった。



午後からも引き続き、いろいろと見て回ったけど、川の中流域は畑を作るのに良い土地だった。


反対に下流域は水田を作るのに向いている。


牧畜は中流から山にかけて牧草地を整備すれば良さそうだし、果樹園も出来そうだ。


よし! ここに決めた!  ここを開拓してセレネ王国をつくるぞ!

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