第232話 ◆最適な場所
◆最適な場所
南北に長い大陸を北上して行くうちに気候は、だんだんと温暖になって来た。
この辺りは、きっと温帯気候なのだろう。
だとすれば、あたしが住んでいた東京のように暑過ぎず寒過ぎずで、住むにはちょうど良いかも知れない。
なので付近に開拓に適した土地がないか双眼鏡を使って辺りを細かくチェックする。
平坦な土地と川か湖があって、近くに材木が切り出せる森があればベストだ。
あとは、付近に人が立ち入った形跡がないことも重要だ。
更に欲を言えば、船が着けるような入江があれば、なお良い。
セレネ、さっきから何を見てるの? 双眼鏡で辺りを見回していたあたしを見つけてアリシアが近寄って来た。
アリシア・・・ 開拓するのに良い土地があるか見てたのよ。
開拓ですって! それじゃあ、冒険の旅はやめてしまうの?
そうね。
でも、いったいどうして?
あたしが旅をしていたのは、どうすれば自分が住んでいた世界に戻れるのかを探すためだったの。
でも、向こうの世界に戻った時に、そこにはあたしの居場所がないのが分かった。
だから、もう旅の目的を失ったの。
でも・・ それならあたしの修行はどうなるの?
元々はモッフルダフに依頼があったのだし、魔法はコリン君に教えてもらえば、もっと上達するでしょ。
教養関係なら、司書のキャロンさんが居るし問題は無いんじゃない。
そんな・・・ ひどいわ。 セレネってば、あたしのこと全然わかってない!
アリシア・・・
あたしは、泣きながら船室の方に駆けて行くアリシアを見ながら立ち尽くしていた。
セレネさん、小さい子を泣かせてはいけませんね。
モッフルダフ・・ いまの見てたの?
船は狭いですからね。 ひょっとしてアリシアさんがなんで泣いたのか分かってないのですか?
えーっと・・・ なんで?
う~ん。 セレネさんも修行が足りてないですね。 アリシアさんは、セレネさんが大好きなんです。 だから離れたくない。
アリシアがあたしのことを・・・ 大好きって・・
えーーーーっ! でも、いつも突っかかって来るし、上から目線でものを言ってくるし。
それは、好きな女の子に意地悪してしまう男の子みたいなものです。
だって、アリシアは女の子だし。
ホッ ホッ ホッ それは例えですよ。 セレネさんだって、シルフさんやメイアさんから、明日から別々の道を歩いて行きましょうと言われたらどうですか?
そんなの嫌に決まっているじゃないですか! あっ・・・
そういう事です。
・・・
そんな事があってから半日が経ったころに、船は小さな入江がある綺麗な場所にさしかかった。
真っ青な海は、澄んで海底が見えるほどだ。
ここ、凄くいいわ! あたしの理想的な場所よ♪
入江には小さな川が注ぎ、海から内陸に向かって草原が広がっている。
両側には森があり、遠くには山々が連なっていて、景色がきれいで落ち着く。
ねえ、モッフルダフ。 ここに2日くらい寄ってもらっていいかしら?
セレネさん、この土地の下調べをするのですね。
うん。 お願い。
そう言う事なら了解です。 ただし、この入江は水深が分からないので、少し沖に停泊することにします。
ありがとう、モッフルダフ。
そして、あたしはこの土地に関する諸々を調査することにしたのだった。
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