第174話 ◆魔王討伐作戦(その7)

◆魔王討伐作戦(その7)


ニーナは治癒魔法を自分に対して何日も掛け続けていた。


おそらくヒドラの体表には猛毒があったのだろう。 それに触れてしまった。


体力があるうちは傷の治りも早かったが、体力が落ちてくると治りが極端に悪くなった。


それでも右腕は、なんとか動かせるようになって来た。


あとは体力が完全に無くなってしまう前に、水と食べ物を得なければならない。



ニーナは流木を杖つえにして、波打ち際までやって来た。


何日か前に、何者かがこの辺りに潜んでいる気配がしたが、今はただ波の音だけが聞こえる。


岩場までやって来ると、小さな魚が泳いでいたので何匹か捕まえた。


捕まえた魚に自分の手をかざし、小さな炎を出して焼いて食べる。


何日ぶりかで口にした魚は、とてもおいしく感じられた。


ニーナは、これが飢えるということなのだと初めて実感したのだ。



残りの魚も、あっと言う間に食べてしまう。


少し体力が回復してきたので動けるうちに岩場を回り込み、森の中に水を探しに入った。



この島はさほど大きくないため川は流れていない。  雨もあまり降らないので、もしかして水は無いかも知れない。


更に森の中に分け入って見ると、緑色の実が生っている木を見つけた。


ニーナの妖精の本能は、この実は食べられると言っている。


ニーナは、実を一つもぐとカプリと一口かじった。


じゅわっと甘い果汁が口いっぱいに広がる。


そう、この実はセレネが最初に食べたあの木の実だった。



この緑の実は、体力回復効果もあるし、水分も十分に補給できる。


ニーナは徐々に活力が湧いてくるのを実感していた。


水の代わりに緑の実を持てるだけ採って、岩場に引き返した。


明日の分の魚も獲っておこうと思ったのだ。


岩場の窪みに溜まった海水の中には、小魚が取り残されていることが多い。


ニーナが魚を獲るのに必死になっていると突然背後から人の声がした。

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