第155話 ◆海賊と人魚と猫耳司書さん
◆海賊と人魚と猫耳司書さん
この町で目標としていた薬の販売は、まだ8割くらいだったけど、モッフルダフの方は薬問屋に卸すだけなので、もうやることが無い。
あたしの所為でモッフルダフの商売に迷惑をかけるわけにはいかないので、この町での販売は今日でお仕舞いにすると申し出る。
それならば、次の航海用に水と食料を仕入れるので、2日後に出航しようと言われた。
ならば、明日はまるまる一日時間が空く。
あたしは、少し気になることがあったので、その時間を利用してそのことを調べて見ることにした。
実は前に海賊の宝物を見に行った島で、人魚たちにそれを阻止された事が頭の隅から離れない。
人魚達は海賊の宝を守っているというよりは、儀式の場所に踏み入れるなという雰囲気だった。
ひょっとしたら、人魚と海賊の宝物とは全く関係ないのかも知れない。
実は昨日、薬を売り歩いていたら大きな図書館があるのを見つけた。
もしかしたらそこに人魚族に関係する本があるかも知れない。
ニーナ(娘)も本を読むのが好きなので、明日は一緒に連れて行くことにした。
妖精(嫁)とメイア(子供)とアリシア(JS)は、コリン君(男の娘)に面倒を見てもらう。
3人が脱走しないように、コリン先生のお菓子作り教室を餌に一日おとなしくお留守番をさせるのだ。
図書館は小高い丘の中腹にあり、緩やかだが長いダラダラ坂を15分くらい上っていかなければならない。
周りは雑木林だったり、公園があったりで住宅は少ない。
航海で海の上にいる時間の方が圧倒的に長いので、久々の森林浴が気持ちいい。
薬を売り歩いているときは林の陰で気が付かなかったけど、この近辺には図書館の他に美術館や郵便局や大きな病院なども建っている。
もう少し早く気が付いていれば、美術館は一度見てみたかったなと思った。
此処の図書館は入口と出口が分かれていて、入館するときは入口の前にあるカウンターで荷物を預けることになっている。
蔵書の全ては持ち出し厳禁で、出口で本を持っていないことをチェックされた後、カウンターで自分の荷物を受け取る仕組みだ。
ニーナは入館すると直ぐに書棚を見て歩き、読みたい本の絞り込みをしている。
図書館に居られる時間は、5時間くらいなので賢い方法だと思う。
あたしは、手っ取り早く猫耳の司書さんに人魚族のことが詳しく分かる本と海賊が関係した事件の記録のことを教えてもらった。
人魚族について書かれた本によると、人魚族はこの広い海の中で比較的水温が高い赤道付近に生息していた原始人魚族の末裔だそうだ。
現在は3つの大陸を除いた比較的大きな4島のうちの一つを拠点に、海上交通の安全を保障する代わりに通行税をとっている。
もしも通行税を払わなければ船底に取りついて穴をあけ沈没させられてしまうと、船乗りの間で真しやかに言われている。
人魚族の現国王はモモちゃんのお父さんで、名前はラメール3世と言うらしい。
男女比はミツバチみたいに殆どが女性で男性が1割くらいで、男は基本働かないようだ。
なるほど、あれだけの数の人魚を見たのに男の人魚は見た事がない。
でも、見たらきっと気持ち悪いかも・・
ププッ 想像したら笑えて来て思わず吹き出してしまった。
あたしが、しばらく引きずってケタケタ笑っていたら、猫耳司書さんと目が合ってしまった。
すみません、うるさくして。
あたしはペコリと頭を下げた。
すると猫耳司書さんが、トコトコとこっちにやってくるではないか。
あわわ 強制退館?
ごめんなさい ごめんなさい。 静かにしますから・・・
そんな、あたしには構わずに猫耳司書さんは、
あなた先日港でモッフルダフさんと一緒にいましたよね?
と訊いてきた。
え~と はい、いました。
やっぱりそうでしたか。
司書さんは、モッフルダフとはお知り合いなのですか?
はい、実はわたしも少し前まで、一緒に世界中を商売して回っていました。
ええっ そうなんですか? ちっとも知りませんでした。 それじゃあ、フィアスとも?
ああ、懐かしいですね。 彼は元気にしてますか?
少し前に手術しましたけど、今はもう元気です。
そうでしたか。 ひょっとして大きな烏賊にやられたとか?
はい。 よくご存じで。
やっぱりそうでしたか。 わたしが航海してた時も、フィアスは何度かあの烏賊に襲われました。
いやな奴ですね。
そうですね。 でも、フィアスを狙っているのは、あの烏賊だけではないんですよ。
へぇ~ それは初めて聞きました。 なんだかヤバイですね。
でも、モッフルダフが居れば大丈夫です。 何と言っても彼は頼りになりますから。
あっ すみません。 本を探しているところを司書のわたしが邪魔をしてしまって。
いいえ、ちょっと調べたいことがあっただけなんで、大丈夫です。
人魚と海賊でしたっけ?
そうなんです。 先日、海賊の宝物がある島に行ったんですけど、人魚達に邪魔されて結局見ることが出来なかったんです。
それを聞くなり猫耳司書さんは、突然 に゛ゃ~ご と一声鳴いて2mほど後ろに飛び シャーーっと逆毛を立てあたしを威嚇し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます