第150話 ◆氷漬けの人魚たち

◆氷漬けの人魚たち


前方の海は何百という数の人魚たちで埋め尽くされていた。


これは、海賊の宝物を見に行ったときの仕返しに団体さんで来たのかな?


気の強いアリシアは、船首像フィギュアヘッドに乗り出さん勢いで、人魚たちに邪魔をするなと叫んでいる。


アリシアは、本当にお母さんのように逞しく育っている。


この分ならもうあと少ししたらヒドラですら、あっという間に倒すかも知れない。 


・・・


しかし、この人魚たちは、いったいどうしたものか。 この人たちって、なかなか話が通じなそうなんだよね~。


モッフルダフたちは、二日酔いで頼りにならないし。 あと男は、コリン君だけだしなぁ・・・ 


フィアスもクジラ君も人魚たちが、どこかに連れていってしまったようで見当たらない。


さっきの衝撃は、フィアスたちの曳航用ロープを外した時のものに違いない。


ロープを外したと同時に、人魚たちが船体に取り付いてブレーキをかけたのだろう。


・・・


あたしがどうやって人魚たちと交渉しようか考えているとアリシアが何かの魔法を詠唱し始めた。


おっと アリシアさん、魔法を使っては駄目よ!  お母さんから注意されている・・・でしょう・・・


あ゛ーーー  遅かった!  やっちゃったよ!


アリシア、あなた何をしたの?


船首から恐る恐る覗いてみれば、海が凍っているではないか!  しかも逃げ遅れた人魚が氷漬けになっている。



アリシア、早く魔法を解いて!  早くしないとあの人魚たち、凍死しちゃうわよ!


えーーーと?  氷を解かす方は、まだ覚えていないの・・・


ええーーっ  ど、ど、どうするの?  たいへん、このままじゃ人魚たちと戦争になっちゃうかも!


あたしは、パニックになった。



そこに、甲板が騒がしいのでコリン君が様子を見に出て来た。


セレネさん、いったい何があったのですか?


あ、あれ見て。 コリン君、どうしたらいいと思う?  早くしないとみんな死んじゃうよ!


あたしは、氷に閉じ込められた人魚たちを指さした。



これはたいへんだ。  よしっ、ここは僕に任せてください。


コリン君は、そういうなり何か魔法を詠唱し始めた。


あたしが、あわあわしている間に、凍り付いた海が少しずつ解け始める。


3分もしないうちに、すっかり解けてもと通りになった。


人魚たちもなんとか無事だったようで、今はもう海面にその姿はない。



コリン君、すごい!  今のは何ていう、どんな魔法なの?


いや、ただの氷結魔法の逆詠唱ですけど。


そうなの? 


アリシアの方を見たら、既にトンズラしていた。


う~ん、なかなか先が思いやられそうな女に育ちそうだ。 あとで少し絞めて置こう。


でも、頼りなさそうだった男の娘のコリン君が、意外と頼りになりそうなのでホッとした。


やっぱり男の子がいると安心するなあ。



もにゅぱ~


あっ  さっきの変な鳥がまた来た・・・

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