第149話 ◆もにゅぱ~ 

◆もにゅぱ~  


次の日は朝から快晴だった。


見事なくらい空には一つの雲も浮かんでいない。


こっちの世界は太陽の光が少し弱いため、大気の対流が緩やかなのか、気象の変化も大きくない。


だから前に経験したような大嵐は、年に何回も起こらないのだ。


これは航海の機会が多い商人や毎日漁に出る漁師などにとっては、たいへんありがたい。


・・・


コリン君は、あたし達より早く桟橋に来て待っていた。


思わず今日もかわいいね。 と言ってしまってから、しまったと思った。


案の定、コリン君はガクッと膝から崩れ落ちた。


でも、どう見ても気合を入れて化粧をして来てると思うんだけど。


服は、まあお父さんが選んだのなら仕方が無いが、化粧は自分でやってるよね!


・・・


けしからんことに、モッフルダフたちは、遅刻して来た。


昨日遅くまで、酒場のお姉さんたちと盛大に飲み会を行っていたようなのだ。


航海に出る前の日は、船乗りはみんなこんな感じらしい。


二日酔いでダラダラしているし、みんな超お酒臭いので、あたしは一人でプンスカ怒っていた。


傍でガーガー怒ると、頭がガンガンするらしいが、自業自得だと思う。


・・・


みんなグダグダで結局予定の時間より、1時間以上遅れての出航となった。


次に停泊するのはお隣の港だが、そこまではなんと10日もかかる。


でも、フィアスとクジラ君は久しぶりの航海で、すこぶる嬉しそうだ。



それに反して、二日酔いが益々ひどくなったモッフルダフは、舵輪に手を添えもせずに時々呻き声をあげている。


ねえ、お願いだからここでもどさないでよ。 あたし掃除しないからね!  


普通の人だったら、顔が青くなったりするので気分の悪さも伝わるけど、モッフルダフは顔が黒い毛糸玉なんでサッパリ分からない。


あたしがそばに居ると頭痛が酷くなるので、しばらく近くに来ないでくれと失礼なことを言うので、またプンスカ怒って船尾に移動した。



船尾には、メイアが居た。


こんなところでどうしたのメイア?


メイアが一人で空を見ているので、つられて上空を見上げれば、いままで見たことがないような大きな鳥が飛んでいる。


なんだか不思議な色の羽だね?


メイアが頷く。


その時、その大きな鳥が突然鳴いた。


もにゅぱ~


ぷっ  変な鳴き声!


もにゅぱ~  もにゅぱ~


アッハハハ  変な声~


何度も聞いているうちに、とうとうメイアが鳴きまねをし始める。


もにゅぱ~


ひぃー  笑い過ぎてお腹が痛いー  メイア真似するのもう止めてーー


もにゅぱ~


アハハハ  ひぃ~  ガハッ  おぇっ  


もう笑い過ぎてとうとう、えづいてしまった。


ひぃー  苦しぃーー


もにゅぱ~


アハハ


あたしを笑かして半殺しの目にあわせた変な鳥は、しばらくすると何処かに飛んで行ってしまった。


ふぅ もう一生分笑ったような気がするよ。


あたしが、やっと一息ついた時、船首の方からラッセたちが騒ぐ声が聞こえて来た。


もう、酔っ払いって本当に大嫌い!  また怒りがこみあげて来る。



苦情を言いに船首の方へ行こうとした時、突然船がガクンッと音を立て、大きく一度揺れて止まってしまった。


あちゃー、岩礁に乗り上げたか?  だから二日酔いで操舵するなって言ったのに!


ぶつぶつ独り言を言いながら、船首で騒いでいるみんなのところに近寄ると、なんだか様子がおかしい。


どうしたの?  よほど大きな岩礁にぶつかったのかと船首から下を覗き込んだあたしは、そこに見たものに驚愕した。


なんと、前方の海は何百という数の人魚たちで埋め尽くされていたのだ。

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