第129話 ◆別れ

◆別れ


いよいよ出航の日、エイミーとリアムが見送りに来てくれた。


二人はこの後、まりあ先輩の国へ戻り、女王様(まりあ先輩)の親衛隊に入隊志願するらしい。


二人ともまりあ先輩とは友達になったし、もちろん子爵のあたしからも依頼状を書いてあげた。


とても頼りになる二人がパーティーから抜けるのは戦力ダウンだし、寂しい限りだ。


出会いがあれば、いつか別れもやって来る。


エイミー、リアム、いままでありがとう。  二人が居てくれなかったら、とてもここまで来れなかったよ!


セレネも体に気を付けてね。 シルフ、ニーナ、メイア、アリシアも・・・ さようなら。


エイミー、赤ちゃんが出来たら必ず教えてね。


うん、うん 必ず連絡するわ。


それじゃあ、もう行くね。  元気でね。  さようなら、エイミー。



さあ、前を向いてしっかり歩いて行こう!  あたしは心の中で強く思った。



・・・


これから船は、お隣の国へ向かう。  隣の国もこの国の同盟国で、先の戦争で中立の立場を取った国である。


大陸に7つある国の中では、2番目に豊かな国で軍隊の力もそうとう強いらしい。


この話しをモッフルダフから聞いた時、やはりこの大陸の平和は経済力と戦力の均衡によって保たれていると感じた。


もし、このバランスが少しでも崩れたら、たちまち戦乱の世がやってくるかも知れない。


どうして、みんなが仲良く暮らすことが出来ないのか。  これは本当に難しい問題だなと思う。


人間の欲が無ければ争いは起きない。 でも、欲が無ければ技術の進歩が止まってしまう。


そして欲によって人が動き、欲によって富と貧困の差が生じ、そこに妬みや憎しみが生まれる。


あたしが住んでいた世界も、こっちの世界もその辺の事情は同じようだ。


この渦に飲み込まれてはいけない。  自分の信念を持って、正しく真っ直ぐに生きて行こう。


・・・


次に行く国は、医療分野の研究がもっとも進んでいて、良い薬がたくさん開発されている。


したがって、今回は薬品類を多く仕入れる予定だ。


薬はどこの国でも必要とされるし、利益も多く上がるのでとてもおいしい商品だ。


ただし常に品薄状態で、取引に新規参入の商人が割り込む隙間は無いのだ。


そこで、今回はモッフルダフが仕入れた薬品を分けてもらうことになった。


一応、次への顔つなぎという意味も含めて各薬品の卸問屋には、あたしもモッフルダフの身内ということにして一緒に付いて回った。


これから、残りの3つの国を回った後、次の大陸へ向かうため、薬品は大量に積み込んでいる。


そして、このタイミングで高額な海難保険にも加入する。


この保険は商船保有者の組合が運営しているが、それなりに事故の発生件数もあるので、掛金も高額なのだ。


もしもあたしが、単独で商売をしていたなら、掛金だけで利益が飛んでしまうだろう。


それだけ海には危険がいっぱいなのだ。 


・・・


この世界に大陸は3つある。 いま居るのは、その中で一番小さい大陸だ。


残りの2つの大陸は、此処とは比べ物にならないくらいの大きさだ。


そして、大陸間は気が遠くなるほどの距離がある。


今の飛行船の性能では、大陸間の移動は不可能であり、全て船での行き来になる。


そして、その距離のおかげで大陸間の戦争が起きる可能性は皆無なのだ。


なぜなら、他国を責めるだけの兵隊や武器を輸送する手段|(船)がない。


国が傾くほどのお金をつぎ込み、船を建造してまで他国を攻撃する国はないだろう。



モッフルダフから出航までにいろいろな手続きがあり、あと3日は滞在するので、メイアをある場所へ連れてってあげると喜ぶよと言われた。


その場所の詳細を聞いたあたしは、なるほど是非連れて行ってあげようと思った。

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