第119話 ◆漂流

◆漂流


チャポン ジャブッ


ドップン


波の音で意識が戻る。


気が付けば船体の一部と思われる、わりと大きな板切れに掴まって波間を漂っていた。


先に飛び込んだエイミーとリアムの姿は辺りには見えない。


もしかしたら巨大烏賊に食べられてしまったのか。


それにニーナやシルフやアリシア、メイアはどうなったのだろう。 うまく逃げられたかな?


幸いなことに、板切れは人が乗れる大きさだったので、その上に這い上がる。


海龍のことを思い出して、海洋生物の餌食になっていなかったのは正直、運が良かったと思う。


だが、あたりは広大な海が広がっているだけで、当然島影などは見えない。



結局、あたしの命は持ったとしてもあと一週間程度だろう。 雨が降らなければ、飲み水がないから3日くらいかも知れない。


このあたりの海は水温も高く、体の熱が奪われなかったのは幸いだった。


それに、この星の太陽は、それほど熱くないため、肌が焼かれてジリジリするようなことも無い。


海上保安庁もないこの世界では遭難者の救助など考えられるわけない。


微かな希望としてなら、メイアが無事で空から見つけてくれるか、モッフルダフが引き返してくれるかか?


こちの世界がどれだけ広いのかは地図では分からないけれど、航海上の船の数は圧倒的に少ないと思われた。


そんなことを考えていたが、波の揺れがなぜか心地よく、うとうとと眠ってしまった。


・・・

・・



ザバーーン


急に大きな波を受け、あたしは海に投げ出された。


ぶはっ!


慌てて、板切れに掴まる。 


風が強くなってきて、海が荒れだしたようだ。


もう一度、板切れの上によじ登るが、しっかり掴まっていないと振り落とされそうだ。


どうせなら、雨も降って欲しい。  あたしは、のどが渇いていた。


やっぱり、この星の海水も塩辛くて飲めないのだろうか?


両手で海水を掬すくおうとしたその時、自分の乗っている板切れの下を巨大な黒い影がザァーーと通り過ぎた。


わっ!


もう今度こそダメだ!  こいつに襲われて、一飲みにされてしまうに違いない。


黒い影は何回も板切れの下を通過する。


恐怖で体がガタガタ震える。 


今更だけど、自分スカート穿いてないや・・・ きっと飛び込んだ時に引っかかったまま落ちたから、途中で脱げちゃったのだろう。


来る!  次に戻って来た時にあたしを飲み込む気だろう。


経験値が上がったのか、なんとなく感が鋭くなっていて、こういう感も結構当たるようになった。


ザザザーーッ


やっぱり来たーーーー!!


黒くて大きな背びれが波を凄い勢いで切って、こっちへ突っ込んで来る。


ああ・・もうダメ!

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