第112話 ◆不思議なニーナ

◆不思議なニーナ


ニーナが生まれてから、3か月が経とうとしている。


大鮫フィアスは、順調に回復すると思っていたが、巨大烏賊とのバトルで折れた骨が内臓に刺さっているのが分かったため、港湾組合の専門医による手術を行うことになった。


そのため、この港町にはまだ長く滞在することになりそうだ。


手術と言っても外からではなく、体の中に入って患部を治療するらしい。


体長300mを超えるのだから、そういう方式しかないのだろうけど、あたしには想像すらできない。



で、ニーナは、生まれたとき身長25cmくらいだったのが、1日目で50cm、2日目で1m、そして3日目にあたしと同じ身長になったのだが、我娘ながら今一つ性格が分からなかった。


学習能力は、あたしの優秀な遺伝子?のおかげで、既にこの町にある図書館の蔵書を一通り読破している。


そして、外見はシルフと瓜二つでとても美しく可愛らしい。


いわゆる才色兼備さいしょくけんびであり、ママとしては誇らしい反面、女としてはちょっとジェラシーを感じる。


まだ、3か月しか経っていないけれど、どうやらシルフに似て?不思議ちゃんのようなのが分かってきた。


メイド喫茶のアルバイトでは、会話が頓珍漢とんちんかんで常連客が増え、マスターは大喜びだ。


何というか存在自体がふわふわしている。 いつもニコニコしているし、今ここにいたはずなのに、少し目を離すとなぜか遠くに居たりもする。


また、知識は豊富なのだが、例えば同音異義語にめちゃめちゃ弱い。  


恐竜の件でモッフルダフに蹴りを入れ体の形状が崩れたので、介抱しておいてと頼んだら港湾組合の会報誌に、あたしが蹴りを入れたと投稿してくれやがった。


また、メイド喫茶のお得意さんである漁師のお兄さんに牡蠣を沢山もらったので、マスターが賄い用に牡蠣フライを作っておいてと頼んだら柿フライが食卓に並んだこともある。


天然というよりは、生まれて3か月という期間の問題だとは、ママとしても思いたい。


それでアルバイトが無い日には、少しずつではあるけど、一般常識|(あたしの常識もこっちの世界ではだいぶズレているが)を教えるようにした。


ついでにメイアにもいろいろ教える。 ひとつの教室で何学年かを教えている先生みたいだけど、それが結構楽しい。


3人で勉強していると、シルフが焼きもちを焼いて邪魔をしてきたりするけど、彼女はけっして一緒に勉強はしない。


どうしてか聞いたら、勉強なんかしなくても生きて来たし、これからも生きていけるからだそうだ。


シルフは、あたしと出会ってから家族も増えたし、いまのままで十分幸せなんだと言う。


あたしもこっちの世界で家族や友達もできて、今では幸せに思えるようになってきた。


旅の目的は、元の世界へ帰る方法を探すことだった。


もし、向こうの世界に戻れる手段が見つかったら、その時あたしはどうするのだろう?


果たしてシルフとニーナと別れることが出来るのだろうか。

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