第93話 ◆女王様
◆女王様
あたしは、午後から保安局に出頭した。
保安局は港の中央にある大きな建物の中にあり、主に国内治安維持に関する警察および情報機関と外交関係を取り仕切っている部署がある。
この国の守り神である海龍を大砲で打つという暴挙に出たあたしが、いったいどこの国の人間なのかを厳しく調べられたが、あたしは、この星とは別世界の人間であると主張し続けた。
最初のうちは、全く信用してもらえなかったが、用意しておいたスマホを見せると、それまでたいそう横柄な態度だったお偉いさんが急に焦り始めた。
これには、スマホさまさまだった。 こんなに思惑通りの反応になるとは、ちょっとびっくりだ。
それに加え、あたしの制服姿がよほど珍しかったのか、異世界ではかなり身分の高い人物だと勝手に思い込んだようだった。
それで、あたしが嘘をついていないことが分かると、翌日改めてお城に出向くようにと言われた。
出向くと言っても、宿まで迎えが来るそうなので、ゆったりとして待っていればよい。
・・・
・・
・
次の日、宿の支配人がたいそう慌てて、あたしの部屋にやって来た。
お城から迎えが来たのだそうだ。 そのくらい、昨日伝えておいたのだから、何もそんなに慌てる必要はないだろう。
そう思って、のこのこフロントまで降りていくと、エリージャ伯爵様の豪華な馬車がカボチャに見えるくらい、ゴージャスな馬車が停まっているではないか。
まさに金ぴかで宝石がちりばめてある。 あたしの感覚だと上品と下品の間を行ったり来たりしていて微妙なんだけど、お金はかかってるぞみたいな馬車だ。
こんな超目立つ馬車が停まっているものだから、辺りには野次馬が山のようになっていて、乗り込むのがかなり恥ずかしい。
メイアも付いて来ると騒いだが、やはりお城には連れて行けないので、なんとか宥なだめておいて行く。
シルフはこっそり胸の中に潜り込んでいたが、流石にブレザーじゃ隠しきれないので、こいつもおいて行く。
今日のあたしの相棒|(守護神)は、ちょっと前まで使っていたピンクのスマホだ。
これを王様に献上して、許してもらえるかに賭ける。
・・・
・・
・
さすが大陸一の大国のお城だけあって、それは例えようもないくらい美しい。 しかも半端ない大きさだ。
城壁も高くそびえたち、いくらエイミーが頑張っても破壊することは出来そうもない。
大きな跳ね橋を二つ渡り、大きな門を二つくぐると、ようやくお城の建物の入口に着いた。
大勢の憲兵の前を超緊張しながら、案内人|(かなり偉い人)に付き添われ、長い階段をゆっくり進む。
綺麗な中庭を右手に眺めながら長い廊下を何回も曲がるとやがて玉座の間の扉の前に着いた。
扉の両側には、親衛隊のイケメンが門前の仁王様のように立っている。
扉が自動ドアのように開くが実際には、このイケメンのお兄さんたちの手動だ。
隣のお偉いさんが、深々とお辞儀をしてから
あのお方が、この国をお治められている、マーリア・テレイデ女王様にあられせられる。
と、太く渋い声で紹介してくださる。
が、いきなり紹介されても、遠くて見えない!
ええっ、そんなぁ 絶対に見えないよーーー 見えないよーーー 見えないよーーー! ←心の声
セレネとやら、もっと近くに。
えっ、女? ひょっとして女王さまなの?
予想外の女性の声に、びっくりする。
遠慮はいらぬぞ。 もっとそばまで来ぬか。
は、はい・・・
あたしは、お偉いさんが制止するのを気にせず、女王さまの前まで、ずんずん歩いて行った。
そなたが、セレネと申す者か?
はい。 九条セレネ・オウゼリッヒと申します。
我が国が手厚く保護をしている海龍を、砲で殺めたというのは誠のことなのか?
はい。 保護されていることは存じ上げませんでしたし、友の者たちが襲われ、船も沈められると思い止むを得ずに・・・
知らなかったこととはいえ、ほんとうに申し訳ございませんでした。
許していただけるとは思っておりませんが、心からのお詫びの証として、宝物を献上いたしたく存じます。
ほぉ、宝物(ほうもつ)とな。
はい、わたくしの国で作られた、スマートフォンと言うものにございます。
このように、見た物を瞬時に絵にして保存できたり、音楽を奏でることもできる宝物なのです。
あたしは、女王さまをその場で撮影してお見せしたり、音楽を鳴らしたり実際に使って説明をした。
これは、なんと・・・ ZONY製ではないか! 電話は繋がるのか? オンラインゲームは何か入っておるのか?
はっ? はぁーーーー? なんで? 女王さま、なんでスマホの事知ってるんですかーーー!!
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