第67話 ◆2階層目(その5)
◆2階層目(その5)
宿屋に帰り着いたが、みんなは一様に暗い顔をしている。
ねぇ、あたしが言うのもなんだけど、この際無理にダンジョン攻略を続けるのはやめて山越えをした方がいいんじゃないかな?
エイミーが真剣な表情で、みんなの顔をゆっくり見回す。
でも、山越えルートは山賊と戦う可能性が高いんでしょ?
そりゃまあ、奴らは必ず出るよ。 だって高額な通行料を取り立ててるって話しを鉱山の町で聞いたもん。
エイミーの話しは俺も聞いたし、間違いはなさそうだな。 リアムはそう言って腕組みをして何かを考えている。
あたしは、やっぱり人を怪我させたり殺あやめるたりするのはいやだな。
でもセレネ、そうするとケルベロスと戦うことになるんだよ。 あたしは、あいつに絶対に勝てる気がしないよ。
それに、この仲間の誰かが死ぬ可能性だってあるんだ。 エイミーが珍しく慎重に話しを進めてくる。
他のみんなの意見は、どうなの?
わたしの武器は精霊の力を宿した鞭で、この鞭に打たれた魔物はかなりのダメージを受けるのですが、もともと体が硬い魔物には通用しません。
武器はもう一つ持っているのですが、これを使うのは最後の最後という場面です。 それを使うと味方も無事では済みません。
そういえば、モッフルダフは火の山の洞窟でゴーレムを相手に苦戦していた。
つまりモッフルダフさんの武器では、2層以上の魔物と戦うのは厳しいという事ですよね?
はい、残念ながらそうなります。
リアムは?
俺はどっちかっていうと人間相手の戦争しかやってこなかったからなあ・・・ 正直言わせてもらうと山賊なら負ける気はしないな。
それにこの剣(クラウ・ソラス)も魔物相手に、どうやって戦えばいいかも分からない。
もしもこいつが普通の剣に毛が生えた程度のしろものだったら、あの凄い魔物なんかとは戦えないだろうな。
シルフちゃんは?
あたしはセレネ守る。 メイアもたぶん同じ。
そう言うシルフを見てメイアも頷く。
セレネ以外は、山越えルートみたいだけどどうする?
・・・ あたしは、俯いたまま何かいい案が無いか懸命に考えた。
リアム。 さっき、手ごわい敵を倒すのは力ずくじゃダメだっていってたよね。
何かいい作戦があるの?
人間相手の戦争の場合は、相手が思いもしない事をやったり、調子に乗って辺りが見えなくなっているところを不意打ちにしたりした。
もしもケルベロスみたいな強くて動きの早いやつが相手なら、動きを止めてから集中攻撃するとかかな。
動きを止める・・・ てっ、いったいどうやって?
例えばだけど3年前の大きな戦争に行った時は、敵の数が圧倒的に多かったので、粘着力のある樹液を撒いて置いて足止めしたところに岩を落として全滅させたことがある。
それって、いいアイデアだと思うな。 みんなでいろいろ考えれば、強い魔物も倒せるかもしれない!
ただ、どうやってあんなにでかい魔物の動きを封じ込められるかが分からない。 そんなに強力な樹液なんか見たことがないしなぁ・・・
・・・
そうだ! あたし達は、どっちかっていうと全員攻撃系じゃない?
だからマーブルちゃんみたいに防御系の魔法が使える人を探して仲間になってもらうのはどうかな?
マーブルちゃんは、あのゴーレムの攻撃を防いでたし、もっと魔力の高い人が仲間に居れば、なんとかなるんじゃない。
今度は、あたしがみんなの顔を、順番に見回したのだった。
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