対戦ゲーム
(むきー!!何なんだよクソ!!!)
「どうしたの?」
(最近、盗賊テイルっていう3Dオンラインゲームにはまっているんだが。)
「4人のプレイヤーがランダムに集まって、一つの財宝を制限時間以内に奪い合う対戦アクションゲームだね。」
(お宝を最後に持っていた奴が勝者になるわけだが、このゲームって4人対戦の個別戦と、2vs2のチーム戦の二種類のモードがあるんだよ。)
「個人戦と協力プレイ、好みに合わせた遊び方ができるわけね。」
(その個人戦をよくプレイしているんだが、なんか俺以外の3人が変にチーム組んで、俺が絶対に勝てないように妨害して来るんだよ。)
「対戦相手への攻撃も可能だったっけこれ。」
(お宝の奪い合いだから攻撃可能な件については別にいいんだよ。問題は、連中のうちの一人がお宝を手にした場合、他の二人はそいつから宝を奪おうとするどころか、俺からそいつを守ろうとして来るんだよ。)
「あー、そういう。」
(もう意味分からん!個人戦モードなのに勝手にチーム組んで、仲間でない奴には攻撃集中させて気絶ハメを狙ったり、試合ごとに仲間内で勝者を順繰りさせてわざと俺が絶対に勝てない状態にしたり…ふざけんなっての!)
「不満があるなら運営側に問い合わせてみたらいいんじゃないの?」
(何度も問い合わせたさ。でも返ってくるのは『改善に鋭意努力いたします』の一言だけ。同じ被害に遭った奴も少なくないっていうのに、いい加減アクションを起こして欲しいんだよこっちは。)
「NGプレイヤー機能使えばいいじゃん。確かあったよね。」
(あるにはあるけど、連中もサブ垢を複数用意している場合がほとんどで、マナー違反のプレイヤーも結構多いからすぐにリストがいっぱいになっちゃうんだよな…。)
「ご愁傷様。」
(だからこそ、他の良識ある方に倣って、俺も迷惑ユーザーのID晒しを始めようと思ってる!)
「それはまずいでしょ。利用規約に『大衆の前での他ユーザーの情報開示行為は厳禁です。』って書いてあったし。」
(それは知ってるけど…でも、連中だって無垢なユーザーをぼっち雑魚呼ばわりして晒したりしてる。俺だってやられた!でも、連中に屈しないかつ連中の目を覚まさせるためにも、晒し行為は必要なんだ!)
「少し落ち着きなよ。自分が悪視しているものと同じ行為に及んでしまったら、お前自身もお前が嫌う連中と同じように見られる。お前の言葉に説得力がなくなるよ。」
(でも、毒を制するには多少の…。)
「多少であっても毒は毒だよ。それに、晒し行為で連中の目を覚まさせるって言ったけど、それ、自分で意味がないって証明しちゃってるよね?」
(何でだよ?)
「お前は『自分が晒された』にも関わらず『連中に屈しない』という強い意志を持っている。これを相手視点に置き換えてみなよ。」
(…晒されても、ぼっち野郎に屈したくないと思う。)
「よくできました。NGプレイヤー登録のためという点で言えば、個人戦を楽しみたいユーザーが被害に遭わないための予防策として少しは役に立つだろうけど、相手側の意志を変えるとなるとそう上手くはいかない。まあもう一度言うけど、それ以前に晒しは規約違反行為だけどね。」
(だったらどうしたらいいんだよ!このまま手を拱いていろと言うのか!?)
「残念ながらね。こればかりは運営がどうにかしないとどうしようもないと思うよ。プレイヤー側にできることといえば、チーム戦に移るか、交流掲示板で友達IDを交換して遊ぶか。」
(くそ、やっぱり運営か!パパッと解決策を見つけてくれりゃいいのにな…。)
「そう簡単じゃないから仕方ないよ。素人ながらにあれこれ考えても必ず穴は見つかるし、システムを安定して運用させるプログラム作成や時間、コストの問題なんかもあるだろうからね。」
(ちなみに、お前が考えた運営が取るべき対処法って何かある?)
「そうだねぇ…一応2つ考えはあるけど、穴がねえ。」
(穴はともかく、それを言ってみたまえ。)
「一つ目は、プレイヤー間での投票システムを設けること。試合終了時に自分の気に入らないユーザーを4人が各々一人だけ指名して、二人以上に選ばれたプレイヤーはその部屋を追い出されるってやつ。勿論嫌な人間が居なければ誰にも投票しないという選択も可能。発表は同時に行なうものとして、緊張感を持ってやってもらえるように誰が誰に入れたか分かるようにしておくといいかも。部屋内の多数派の意見を尊重するシステムだから、3人仲良しさんも3人競争さんも意にそぐわない一人を追い出すことで自分たちの望んだ部屋を継続して楽しめる。問題点としては、投票で選ばれた人間に逆恨みされて別の部屋で再会した時にあれこれされかねないとか。後は部屋に入る度に追い出されるプレイヤーに救いがないとかかな。」
(ふむふむ…んでもう一つは?)
「友達登録した人たちと遊ぶ時みたいに、プレイヤー自身が部屋を立てるシステム。部屋の概要とかを他のプレイヤーが確認して自分の好みの部屋に入れるようにすれば、住み分けができて問題なく遊べると思うよ。一応部屋を立てた部屋主には部屋を管理するために追い出し機能やNG機能が使えるようにして、問題を起こしたプレイヤーを追い出したり再入室を拒否したりして部屋の秩序を守れるようにするといいかな。問題点としては…」
(よし、入力完了!送信ポチッと。)
「…人の意見を勝手に、まあいいけど。」
(くっくっくっ、これでリアル陰キャラ引きこもり童貞ニートのお花畑どもに鉄槌を下せる!!ざまあみろ!!!!)
「あのさ、そういう何の根拠もない偏見はやめなよ。『ぼっち雑魚』って悪態吐いていたお前の嫌いな仲良しこよしさんたちと同類と言われても仕方ないよ、それじゃ。ていうか、さっきまでの正義感ぶってた言葉も全て、結局お前自身が気に入らない奴を貶めて悦に浸るという歪んだ目的のために紡いだように思えてならないんだが。」
(そっ、そげなことは…。)
「ここで肯定してたらお前のこと心から軽蔑してたよ。その言葉、信じるよ。」
(ホッ。)
「といっても、人の意見を勝手に投書するような奴に抱く信頼感なんて、初めから無いようなものだけどね。」
(ほんっっっっっと、すいませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!)
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