第142話
「な、何の事だかわかんねぇよっ……何言ってんだよっ、バカじゃねぇの……」
シフォンの動揺ぶりが面白くてたまらない……ついさっきまで、私の愛人形や支えになってくれていた人間を罵倒し、頂点だの、女王だの、挙げ句、神などと
冷や汗だろうか、一滴、また一滴とシフォンの額から流れる液体……その「甘い」液体を私はこれからしゃぶり尽くし、楽しむ。
私達を、そして私の愛人形達を欺き、喰うなどと強がった罰として、じっくりといたぶりながら。
「何の事……って、
「うるせぇっ、わ、私は何も隠してない……後ろめたい事なんてしてねぇよっ……」
「本当にそう言えるのかしら今も、これからも」
「ちっ、るっせぇ……そ、そうだよっ……やましい事なんて何もねぇんだよっ……」
シフォンの強がりとは裏腹に、地肌から甘くとろけそうな蜜が否応なく溢れ出る……それは冷や汗に他ならないのだが、私には濃厚な甘みを含んだ蜜に見えるのだ。
全てを舐め、味わいたい欲望を抑え、じわりと確信に私は迫る……。
「駄目よ……嘘は……」
「嘘だとっ……」
「そうよ……」
私は身をかがめ、シフォンの両肩を掴み、互いの顔が触れる距離にまで近づいて、蜜の雫に指を這わせた……。
「もう、自分を偽らなくてもいいのよ……」
「なっ、何がだよっ……」
「だって、あなた今はもう自分で楽曲を創っていないもの……そうでしょ……」
シフォンの瞳が震える……。
「あら、どうしたの……言い返さないのかしら」
私を見ないシフォン……。
私達は以前から、シフォンは自ら楽曲を制作する能力を失い、数名のゴーストライターを使い砂上の楼閣を維持し続けていた事情を突きとめてはいた。
私達は「それ」でも良かった……アーティスト側の頂点に君臨する歌姫のシフォン……。
アイドル側の頂点に君臨するヴィーラヴ……。
互いに適度な緊張関係と両勢力の均衡が保たれ、それぞれに多大な利益と賞賛を享受し得るなら、業界内での醜い性格や、ゴーストライターの存在も「容認」していた……。
こちら側から波風を立てたり、シフォンを挑発する必要性もなかった……。
しかし、シフォン自身が「紳士協定」を破ってしまった。
私の愛人形を「喰ってやる……殺してやる」などと
決定的だった……。
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