第138話

「…………」


「そんな未成年の幼い躰を餌に、オヤジどもに抱かせ、弄ばせて今の人気があるんじゃねぇのっ……それもアンタ、高樹マネージャーさんの考えなんだろっ……ああああぁっ、破廉恥な事っ、キモいねぇ」


 ここまでの妄想を構築し得る能力を「愛」の力に変換していれば、シフォンも偽人に喰われ、堕ちる事もなかった筈なのに……。


「もうシフォンさんっ、いい加減にして下さいっ……!」


 髪を掻き毟り、マネージャーが絶叫した。


 尋常ではない叫びに、シフォンも一瞬驚き、彼を見つめた……。


「わかっている筈ですシフォンさん……こんな事したって意味がないって……」


「な、何がだよっ……!」


「誰かに文句言ったり、嫌がらせしたって何にもならないでしょう……シフォンさんだって内心はわかっているのでしょう……そうでしょうシフォンさんっ……!」


 おそらくは今回が初めてなのだろう……毅然とシフォンに向き合ったマネージャーの姿に、シフォンの威勢がたじろぐ……。




「高樹さん、シフォンがヴィーラヴの皆様、スタッフの皆様、新人アイドルグループそして、高樹さん自身にも酷い態度で接してしまい何とお詫びしてよいか……全て私の責任です。本当に申し訳ありませんでした……」


 膝頭におでこが触れる程に、彼は深く頭を下げて私に詫びる……。


「こんなヤツに頭なんか下げてんじゃねぇよっ……ったく、あんなバカアイドルより私が常に1番じゃなきゃならないんだよっ……!私が頂点よっ、歌姫なのよっ、神なんだよっ……!」


 たじろぐ姿のシフォンは、瞬く間に消え失せていた。


「私の上に誰かがいてはならねぇんだよっ……!」


「シフォンさんっ……」


「るっせぇ……使えねぇ、使えねぇんだよっバカマネージャーっ……死ね……もう死ねよ……」


 奇怪な目つきでマネージャーに言うと、私や数人のテレビ局のスタッフらを指で示し、更に奇怪な表情と声で狂気するシフォン……。


「お前も、お前も、お前も、お前も……テメェらとっとと死んじまえよっ……!」


 狂い、最後に自身のマネージャーを指し示し、そして言い棄てる……。


「テメェが先に死ねっ……今すぐここで死ねよっ、早くっ……!」


 彼の想いは、シフォンには届かない……同じマネージャーの立場として私は悔しく、同時にシフォンに対して悲しみを含んだ怒りが、心の中で湧き上がる……私の愛人形は「あんなにも」私を愛してくれるのに、彼女は……。




「はぁっ……」


 魂と心、そして気持ちが萎え、うなだれるマネージャー……。

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