第23話
ただ、ディレクターの後ろで腕を組み、偉そうに立っているか、更にその後ろのソファーに腰を下ろして、ふたりに「それでいいのよ」と頷く程度しかできないのだ。
アップテンポな前奏が流れる。仮歌の録音に入った。仮歌収録後、プロデューサーの指導、修正を繰り返し本録りへと進行してゆく。
私を「無視」して、楽曲と向かい合うふたり。しかし、この段階になってもプロデューサーの姿がない。一体何をしているのか……。
ふたりは歌う……私の懸念など関係なしに。
いよいよ何もする事がなくなり、立ち尽くしていた私はソファーに座り、今日のスケジュールの確認とメンバーの情報が記されているファイルに改めて目を通す。
20歳
ヴィーラヴのリーダーを務め、個性的なメンバーを束ねる。面倒見が良く、意志の強さで信頼を築き、頼りにされている。宝塚の男役に憧れ、目指していたという話もあったらしいが「それ」を諦めた理由は不明。万希子さんと仲が良く、何でも話し合える間柄。
18歳
ダンスパートを牽引する存在であり、その実力は折り紙つきだが、本人は才能に奢り、ひけらかす事はない。陽気な性格と前向きな行動力を持ち合わせ、特に女性層からの支持が高い。が時折、周囲が凍りつく駄洒落を放つ事もある。
17歳
ベルギー出身。14歳の時、父の仕事の都合で来日。抜群のプロポーションを駆使し、単独で有名ファッション誌のモデルもこなす。英、仏、独、伊、スペイン、ポルトガル、露、日本語の8か国の言葉を自在に操る。流花と女性層をほぼ二分する。クォーター。
20歳
大人の雰囲気、何処までも黒く長い髪が特徴。控え目で前に出る性格ではないが、彼女に悩み事を相談するメンバーも少なくない。物静かな容姿と性格が「災い」し、支持する層は少ないが、隠れファンは多いと推定される。詩織と異なる精神的支柱になっている存在で、その証に「万希子さん」と呼ばれる。
しかし、キャロルアンと同じくクォーターなのか、あるいはハーフなのかは何故か資料には記載されていない。
14歳
最年少にして、ヴィーラヴのヴォーカルパートのキーパーソン。7もしくは8オクターブの美声を備えているとされるが、現時点、全ての音域を開放してはいない。特殊な才能の反動故か、妙な発言や奇行も見られる要注意人物。物怖じせず、自己主張も強いが、何処か憎めない性格で、メンバーや周りから可愛がられる「得」な性質を内包する。
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