2歳児、インタビュアーになる



 マイクを差し出す真似である。


 ちんまり作った握りこぶしをこちらに向けて、アムゴローは母氏に問いかける。


「おなまえは、なんですか?」


「安室、凛、です」


 ママと話しているだけなのに、なぜか照れてモジモジしているのが可愛い。


 そして質問は続く。やはり囁くような小声である。


「すきな、たべものは、なんですか」


「好きな食べ物は、」


 ちょっとした間違いをさりげなく訂正しながら母氏は答える。


「ハンバーグです」


 回答に満足すると、今度は自分に訊いてくれと要求する。


 この質問のやり取りは保育園の先生に教わっているらしく、アムゴローの最近の流行りの1つになっている。


 なんだか外国語を習いたての子どもみたい。


「ファット イズ ユア ネイム?」


「マイ ネーム イズ…」


 なんてやりとりを、小学生の頃通った英会話教室でしたなぁ。


 ま、喋れるようにはならなかったけどさ。


 と、思い出に浸っていると、アムゴローが再び仮想マイクを母氏に向けてきた。


「どんぐりの、ちかいは、なんですか?」


 !?


 ……!?


 んん!?


 なんだそれ全然わからん!


 あ、そうか聞き返してみればいいんだ!


 母氏は尋ねる。


「どんぐりのちかいはなんですか?」


「ちーかい、ちーかい!」


 !?


 謎が、深まった……




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